埼玉新聞

 

<豚コレラ>もし感染したら再開無理…追い詰められる養豚農家 早くワクチンを 毎朝どきどきして豚舎見る

  • 養豚場に続く道路は通行止めになった=17日午後0時35分ごろ、小鹿野町般若

 「もし感染が入ったら再開は無理」―。小鹿野町の養豚場の豚から17日確認された豚コレラ。13日の秩父市に続いて確認されたことで感染が広がった形となり、養豚農家らは新たな感染などに不安を訴える。感染経路が分からない中で、野生イノシシを近づけない対策の強化やワクチンの接種を求める声が相次いだ。

 県北部の養豚業の経営者は毎朝豚舎を見回り、豚の健康をチェックしている。秩父市で豚コレラの感染が確認されてからは、どきどきしながら豚舎に入るようになった。精神的にも追い詰められ、「もし入ったら再開は無理という気持ちがある」と心境を明かし「一刻も早くワクチンで防いでほしい」と話す。

 国は、一般に感染を媒介する一つと指摘される野生イノシシが豚舎に入らないための防護柵の設置に取り組んでおり、最大で50%が補助されるという。「国のほか県や市町村にも補助金を出してもらいたい」と求める一方で「完全なシャットアウトは難しいのでは。暗い気持ちで過ごしている」と心配する。

 埼玉で生産されるブランド豚「彩の国黒豚」。生産体制を管理しているJA全農さいたまの畜産酪農課は「問題は出ておらず、出荷も通常通り」と話す。黒豚の生産農家は5軒で、全体で年間約5千頭を関東を中心に出荷している。担当者は「感染ルートが分からず心配だが、衛生マニュアルを徹底し、注意喚起もしている。今は状況を見守るしかない」と語った。

 イノシシなどの野生鳥獣肉を食材とするジビエの業界も心配の目を向ける。豚コレラは人に感染せず、仮に感染したイノシシの肉を食べても人体に影響はないとされるが、精肉や狩猟したイノシシ肉などを販売する寄居町の30代男性経営者は「イノシシが養豚場に近づけない隔離の対応を行政はもっとすべきだ」と注文する。

 本庄市の児玉白楊高校は動物の生態や飼育方法を学ぶため、メスのミニブタを飼育している。畜舎周辺には消石灰をまいたり足裏の消毒槽を設けたりしている。

 豚コレラに感染した豚が確認された小鹿野町般若の養豚場。付近の道路は通行止めになり、旧町立長若中学校には県職員などの関係者が続々と集結した。白い防護服を着た関係者は長靴を持って、険しい表情で養豚場に向かうバスに乗り込んだ。

 近所の60代男性は「豚を飼育した人や殺処分する人も同じだが、豚もかわいそう」。60代女性は「秩父市の養豚場で豚コレラが出たと聞いて、近くにある養豚場は大丈夫かなと思っていた。人に感染することはないと知っていても不安。国が豚へのワクチン接種を推進してほしい」と話した。

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