埼玉新聞

 

ゆる~くつながる弁当宅配…産前・産後の「孤育て」解消へ 共感呼び需要増も資金難に 埼玉・狭山でCF開始

  • 利用者に弁当を届ける児玉保光さん(右)

    利用者に弁当を届ける児玉保光さん(右)

  • 宅配弁当。多い時は90食を用意する(こそだて支援comono提供)

    宅配弁当。多い時は90食を用意する(こそだて支援comono提供)

  • 利用者に弁当を届ける児玉保光さん(右)
  • 宅配弁当。多い時は90食を用意する(こそだて支援comono提供)

 埼玉県狭山市で産前・産後弁当宅配サービスなどを展開する「こそだて支援comono」(代表・児玉保光さん)が1日から、事業継続を目的としたクラウドファンディング(CF)を開始した。85万円を目標金額に、3千円からのプランで支援を募っている。

 同団体は、2020年3月に自身も子育て世代である児玉さんが立ち上げ、同年5月に弁当宅配サービス事業を開始した。現在、狭山市在住の妊娠期から産後4カ月までの家族を対象に、安価で弁当を届けている。

 サービスを始めたきっかけは、自身が子育て中に感じた「社会とのつながりの断絶」。児玉さんは「周りに子育てを手伝ってくれる人がいっぱいいたのに、孤独を感じた」と振り返る。そんな時に心の支えの一つになったのが、近所の子育て施設で出会った“ママ友”の存在だった。「ママ友と話すことで救われた。もっと気軽に、人とゆるくつながれる場がほしい」と感じたという。

 そこで考えたのが、「弁当をツールにつながる」宅配サービスだった。市内の農家や精肉店、飲食店に弁当の調理協力を受けながら、ただ弁当を届けるだけでなく、弁当を届ける際の会話など、利用者たちとの双方向の関わりを大切にしている。「会っておしゃべりするのをすごい楽しみにしている」といった“孤育て”に悩む母親たちの声も多いという。

 当日午前中までに電話、無料通信アプリ「LINE」(ライン)で連絡すれば、その日の午後に自宅まで弁当が届けられる気軽さが、母親たちの共感を呼んだ。当初週1回、20食ほどだった宅配件数は、1年後は約40食に倍増。昨年11月ごろからは、物価高騰も影響し、1回80~90食程度まで急増した。

 事業の拡大に合わせて、活動2年目には児玉さんもキッチンカーを購入し、自身で調理を行うようになった。今年4月からは宅配日を週2回にも増やした。児玉さん1人から始まった運営は、有償ボランティアを含めて11人体制に成長した。

 しかし、事業拡大の一方で、宅配に利用する車の燃料費やクーラーボックスなどの備品代、人件費なども増加し、事業は赤字だという。

 活動資金には助成金や寄付金、休日を中心に県内各地のイベントに出店してきたキッチンカーの売り上げなどを充ててきたが、現在は児玉さん自身の資産も投入して事業を支えている状態だ。弁当も1食300~500円に「泣く泣く」値上げした。それでも、現在確保できている予算では活動を途中で断念せざるを得ない状況という。

 児玉さんは「事業をなんとか続けたい。誠実に柔軟に、そして丁寧に活動し続けたい」と支援を呼びかける。支援はCFサイト「READYFOR」(https://readyfor.jp/projects/comono)にて、6月5日まで。詳細は、こそだて支援comono(電話070・3103・9778)へ。

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