埼玉新聞

 

15歳でプロデビュー戦、さいたまの女流囲碁棋士が大きな一歩 初勝利ならずも「タイトル取りたい」

  • デビュー戦の対局を振り返る大須賀さん

 先月、15歳で囲碁のプロ棋士になったさいたま市の大須賀聖良さんのデビュー戦が3日、都内の日本棋院で行われた。第7期会津中央病院女流立葵戦の予選で、木部夏生二段と対局した。初手合いに「無心で臨んだ」という大須賀さん。初勝利はならなかったが、大きな一歩を踏み出した。

 午前10時から始まったプロデビュー戦の持ち時間は2時間、5分前から1手60秒の秒読み。午後3時すぎに終局し、「負けた」と家族に通信アプリで連絡した。

 大須賀さんは「同一年度内に日本棋院東京本院の院生研修Aクラスに5カ月以上在籍」という条件を満たし、女流特別採用推薦棋士として初段に採用された。母親の摩耶さんは女流アマの王者に2度輝き、伯母は大沢奈留美四段という、囲碁が身近な環境で育った。

 囲碁を覚えたのは4歳ごろ。身近に碁があったため、自然に碁石を握っていた。やがて祖父の大沢完治さんが主宰する緑星囲碁学園さいたま新都心校で学ぶようになり、小さい頃には学園が保育所代わりになっていたことも。めきめきと腕を上げ、小学3年の時に囲碁・将棋チャンネルの番組に出場した後、小4の夏から囲碁エリートが集う東京の洪道場に通い始める。小6から中1にかけて断続的に約1年間、韓国の囲碁道場に単身で赴き、朝から晩まで同世代の子どもたちとともに実戦や詰碁、棋譜並べなどの修業に明け暮れた。

 その頃から「プロになるしかない」と意識し始め、帰国後、日本棋院の院生としてプロを目指した。順調に序列を上げていったが、昨年の女流特別採用試験では次点に泣いた苦い経験もした。

 アマ時代には小6の少年少女全国大会で5位、ゆうちょ杯ジュニア本因坊戦で中学生に交じって全国4位になった。埼玉女流名人戦(埼玉新聞社主催)では3連覇を達成し、全国大会では摩耶さんとともにベスト8に入賞するなどした。

 現在は高校には行かず「1日10時間ぐらい道場で勉強している」。プロが主宰する張豊猷八段の「今研」、小山空也四段の「空研」、高尾紳路九段、小松英樹九段の研究会にも意欲的に通っている。

 囲碁界は現在、最年少の10歳で入段した仲邑菫初段が男性棋士に2連勝したことや、17歳の上野愛咲美女流棋聖が一般棋戦の決勝に初めて進出するなど、女流棋士の活躍が目立つ。

 プロになり、「一番感謝したいのは両親です」と話す大須賀さん。今後の目標は「女流のタイトルを取りたい」と語る。摩耶さんは「ひとまずほっとしました。ここからは本人の努力次第なので、今以上にもっと勉強してほしい」と話している。

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