埼玉新聞

 

<台風19号>川越の特養が浸水、入居者ら230人を救助 施設関係者ら出迎え「もう大丈夫だよ」

  • 救助隊にボートで救助される特別養護老人ホームの入居者ら=13日午後4時ごろ、川越市下小坂

 バケツをひっくり返したような豪雨に吹きすさぶ強風。巨大台風は上陸する前から猛威を振るい、急激に増水する河川に、避難を指示する緊急速報が夜中、携帯電話から響き渡った。川越や東松山など県内各地で道路は冠水し、土砂が崩れ、家屋は浸水。濁流で多くのお年寄りが取り残された。ダムの緊急放流や荒川などの氾濫の可能性に、県民は身を寄せて緊迫の夜を明かした。

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■ボートで救助

 川越市下小坂の特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」では、入居者ら約230人が浸水で取り残された。県警や消防、自衛隊が救助活動を行い、家族や施設関係者が入所者が救出されるのを不安そうに見守った。

 救助はボートで施設に近づき、高齢の入居者を岸まで運んだ。ぐったりと疲れ切った様子の入所者がボートから運び出されると、出迎えた施設関係者は「怖かったね。もう大丈夫だよ」と優しい声を掛け、ゆっくりと車いすに乗せて連れていった。

 太陽が傾き始めた午後4時ごろでも、施設内にはまだ多くの入所者が取り残されており、日が暮れる前に全員を救出しようと、救助隊らは次々と黒く濁った水にボートを浮かべて施設に向かった。

 施設から南東に約600メートル離れた小畔川も氾濫。川沿いにある約30世帯の住宅の1階は完全に水に漬かっていた。

 消防のボートで救助された運搬業の50代男性方では、台風が去った13日午前2時ごろ、一気に床上まで浸水し始め、家族5人は急いで2階に避難した。

 男性は「近所の住民は昨夜に名細小学校に避難したが、うちは猫を11匹飼っているため避難できなかった。猫も含め、家族全員が無事で良かった」とほっとしていた。男性の妻は「これからの生活が大変だけど、家族と協力しながら、一日も早く元の生活を取り戻したい」と話した。

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