<台風19号>東松山、都幾川と九十九川が決壊 270戸浸水、住民ら困惑「どこから手を付ければ」
バケツをひっくり返したような豪雨に吹きすさぶ強風。巨大台風は上陸する前から猛威を振るい、急激に増水する河川に、避難を指示する緊急速報が夜中、携帯電話から響き渡った。川越や東松山など県内各地で道路は冠水し、土砂が崩れ、家屋は浸水。濁流で多くのお年寄りが取り残された。ダムの緊急放流や荒川などの氾濫の可能性に、県民は身を寄せて緊迫の夜を明かした。
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■冷蔵庫やテレビも使えない
東松山市では12日夜、市内を流れる都幾川と九十九川の堤防が決壊するなど、約270戸の浸水被害があった。九十九川近隣の住宅では床上浸水が相次ぎ、住民は「どこから手を付ければいいのか」と困惑した様子で後片付けに追われた。
都幾川は葛袋地区の上流左岸堤防から水があふれ出し、その後、一部が決壊。葛袋や石橋、さらに下流のあずま町や早俣地区が浸水した。
石橋地区で自宅が床上浸水した男性(72)は「午後6時ごろに越水したと聞いたが、あっという間だった。こんなことは初めて」、自宅近くの土手の一部が決壊した男性(84)は「家族は避難所に避難。庭先まで水が来たが、ぎりぎりセーフ。まさかこんなことになるとは」と驚いていた。
都幾川右岸の葛袋集落では、用水路の調整施設が壊れたため、その下流の民家が浸水被害を受けた。自宅が床上浸水した男性(60)は「12日は家族3人早めに避難所に行った。大丈夫だろうと思っていたが、こんな状態になっているとは」と話した。
下流の市立南中学校は校舎は大丈夫だったが校庭などが浸水。
九十九川が流れる通り沿いに住む40代の主婦は、12日午後5時ごろ、川の水位が大幅に上昇したことから同市内の知人宅に家族4人で避難、自宅が床上浸水した。「川の様子を見て危険だと感じた。テレビなどは事前に2階に運んだが、冷蔵庫は水に漬かってしまった。何から片付ければいいのか」と困惑した様子で泥の付いた家財を洗っていた。
家族7人、自宅の2階で一晩を過ごしたという自営業清水孝行さん(35)は「氾濫してもくるぶしくらいまでだろうと思っていた。予想外の被害」と驚く。住宅街につながる道路は冠水状態が続き、「とにかく早く水が引いてくれれば」と話していた。
近くのマンションの3階に住む会社員男性(45)は駐車場に止めていた車が水に漬かり動かない状態だという。「夜10時ごろ近隣の車のクラクションが突然一斉に鳴り始めたので外を見ると、車体の半分以上の高さまで冠水していた。短時間で一気に水が増えた」と話す。停電状態が続いているといい、「エアコンやIHコンロが使えない。いつ復旧するのか」と困った様子だった。
氾濫前に同市内の実家に避難したという30代の夫婦の自宅は、膝の高さまで床上浸水し、壁紙がぬれてはがれそうな状態になった。「冷蔵庫やテレビも使えない。ここで生活するのは難しいだろう」と不安そうに話した。