<台風19号>氾濫で神社が消える…天井まで浸水も 東松山で住民ら片付け「堤防改修を再三陳情。人災だ」
2019/10/16/00:00
列島を襲った巨大台風は県内に深い爪痕を残した。障害者支援施設の入居者は避難生活が続き、団地に住む高齢者は断水のため、水が入った重いバケツを手に階段を上る。平穏な暮らしを奪われ、浸水した住宅から家財道具を運び出す住民たちにはやるせなさが漂った。
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河川が氾濫し、約270戸の浸水被害が発生した東松山市では、15日も住民が住宅の家財道具などの片付けに追われた。
市内では都幾川、九十九川、新江川の越水や計5カ所の決壊で、葛袋、石橋、あずま町、早俣、毛塚地区などで浸水被害があった。
毛塚地区では1階天井付近まで浸水した住宅が多かった。農業を営む70代男性は「一人じゃ片付けられないので子どもに来てもらっている。農機具も新米も駄目。米は60俵収穫したばかりで一口も食べられなかった」と肩を落とした。
電子機器組立会社の前で片付け作業をしていた男性社員は「1階にあった機械も道具も、みんな水に漬かってしまった。使えないと思う」と話した。
被害は正代運動広場近くの都幾川や、下流の九十九川堤防が決壊したため広がったとみられている。同広場の近くにあった小剣神社の本殿などは消え、少し離れた新興住宅地のあづま町や周辺の大型商業施設も浸水した。地元の男性は「(未改修の)古い堤防が決壊した。代々の区長が住民の総意で堤防の改修を再三陳情していた。その意味では人災だ」と話した。
市社会福祉協議会は14日、災害ボランティアセンターを開設した。被災者の要望を調査中だが、15日までに二十数件の依頼があり、同日は3件、12人の団体ボランティアが家の片付けを手伝った。
市内では29世帯81人が松山市民活動センターなど3カ所で避難生活をしている。