埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(6)】藤岡防災設備・藤岡実社長、50年連続黒字の強み
県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。
■藤岡防災設備(中央区)藤岡実社長
49期連続黒字企業。さいたま市中央区の藤岡防災設備を一言で表すとすれば、そういうことになる。4月末の決算を前に藤岡実社長(49)は「今期も何とかクリアできそうです」と一息つく。1期1年なので、これで50年連続黒字決算の見込み。周囲は驚き、秘訣(ひけつ)を知りたがるが「借金があまり好きではないので」。藤岡社長は気負いなく答える。
祖父から続く3代目で、主な事業は消防設備の設計・施工と点検。県内大手スーパー全店を顧客に持つ。設置から定期点検、修繕まで一貫して請け負うのが強みで、業務放送や駐車場管制装置の施工、防災用品の販売も手がける。
黒字を重ねたのは先代からで、銀行の融資に極力頼らないのが父・久さんの信条だった。継いだのは2011年。もちろん新社屋建設で資金を借り入れたり、競合他社に契約を取られたり、万事が順調に進むわけではない。「昨年は苦しかったです」と言うように辛くも黒字に乗せた年もある。それでも続けてきた。
モチベーションの一つが社員からの「ありがとうございます」。同社では夏冬の一時金とは別に4月に決算賞与を支給。全員と面談し、昔ながらのやり方で社長が現金を直接手渡す。その際の感謝の言葉がいつも心に残る。「社員に幸せになってもらいたい。そういった環境をつくるのが自分の役目」と自覚。会議で全社員に月次決算も報告し資金繰りへの理解を深めている。
防災環境の変化や人材確保の面で課題も多いが、目指すのは小さな大企業。「人数は少ないが組織がしっかりしている企業に」と展望を語る。連続黒字の意味を改めて問うと、「自分のやってきた実績と、社員との信頼関係の結果です」。まさに、継続は力なり。