<スポーツのまちづくり7>遊び心に火ともす さいたまスポーツ新聞の号外などクリテリウムで3提案
第7回ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムが27日に行われる。今年から、さいたまスポーツコミッションの主催になるが、私が会長に就く前から既に基本的な路線は決まっており、実質的な運営はさいたま市と市の職員が行うので、今年に関しては私は静観というスタンス。
とはいえ、傍観はしない。十分に内実を分析し、来年の大会は抜本的に見直しをしたい。
今年の大会に向けても私は三つの提案をした。一つは本場のツール・ド・フランスの写真展。7月に視察した際、自分で撮った写真をさいたま新都心駅のコンコースに展示する。レース用の自転車は百数十万円もするものもあり、一緒に面白く展示すれば自転車ファンに加えて市民の関心を呼ぶ。
しかし職員は戦略を理解せず、前年同様に自転車ファン向けで、市民に話題喚起するレベルまでにはならない。
もう一つはオリジナルビールの販売。大会には10万人の自転車ファンが来るし、多くの市民も足を運ぶ。ツール・ド・フランスのロゴを使い、さいたまクリテリウムでしか手に入らないビールを作れば売れるに違いない。大会スポンサーは上限が見えており、今後は自分たちで収益を作らなければ。
しかし職員が立てた販売予測は「売れても1200本程度で、販売員のアルバイト代にしかならない」。それなら、と自ら会場で売ることした。全て売り切ってしまえば「だから言ったじゃないか」ということになる。
三つ目はさいたまスポーツ新聞の号外発行。25日に配るこの新聞を市民とのコミュニケーションツールにしたい。
1面を飾るのは「さいたま市を遊び場にするならどんな街にしたいか」という夢を描いたイメージイラスト。街の中心に新しいアリーナを配し、周りにはサーフィンができるプール、BМXやスケートボードが楽しめるパークがあるし、自転車で走っている人もいる。
このイラストを見た市民が街とスポーツとの関わり方を想像したり、話題にしてくれれば。さいたまが少しでも変わるきっかけになるといい。
9月の天皇杯サッカーで浦和レッズがアマチュアのチームに完敗した。さすがに一部のファンは怒ったが、市民は別にレッズを責めなかった。
私が社長を務めたベイスターズの本拠地横浜なら市民は黙っていない。横浜にふさわしくないと思われた瞬間に「だめだ、あいつら」と見放される。反応が実にビビッドだった。
さいたまの人は何かにつけ「自分ごと感」が薄い感じがする。そんなさいたま市民が本当に変わるのか、正直なところ分からないし、まだまだ手探りだが、市民の夢、遊び心にスポーツを通して、少しずつ火をともしていければと思う。
■池田純(いけだ・じゅん)
1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年、株式会社横浜DeNAベイスターズの初代社長。観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。日本プロサッカーリーグアドバイザー、大戸屋ホールディングスなど企業の社外取締役なども務める。