埼玉新聞

 

埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(7)】扇ゴム工業・川田大輔代表、ものづくり支える自覚

  • ゴム製造を「クリエイティブな仕事だと思っている」と自負する扇ゴム工業の川田大輔代表。後方はゴムを蒸す加硫窯

    ゴム製造を「クリエイティブな仕事だと思っている」と自負する扇ゴム工業の川田大輔代表。後方はゴムを蒸す加硫窯

  • ゴム製造を「クリエイティブな仕事だと思っている」と自負する扇ゴム工業の川田大輔代表。後方はゴムを蒸す加硫窯

 県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■扇ゴム工業(八潮市)川田大輔代表

 八潮市。東京の下町地域から地続きで、製造業事業所が多い工業のまち。扇ゴム工業はここで3代続く老舗のゴム加工業だ。型や芯材に巻いて蒸気で加硫する巻蒸製造と呼ばれる方法で、ゴムローラーやスリーブを一つ一つ手作りしている。「いかにゴムを強くしなやかにさせるか。自分たち次第で手を尽くせばゴムは言うことを聞いてくれる」。川田大輔代表(41)は独特の表現で“ゴム愛”を語る。

 金型を使わない巻蒸という方法ゆえに、単品・小ロットの生産が特長。原料のゴムをシート状にして鉄管や芯材に巻き、布で締めて窯で蒸す。全て手作業で作り上げたローラーは主に他の工場の生産ラインの一部などに使われる。

 「ゴムにまつわる『困った』をサイズや量を問わず金型不要でかなえる仕事」と川田代表。代替の難しい部品の交換や、形が大きかったり特殊だったりする一点物が多く、「毎回どうやってやろうかなと考える」。顧客の要望に寄り添い技術とアイデアで勝負。既存の顧客だけでなく過去3年で新規も20~25件増えた。

 2019年に縁あって同友会に加盟。会社の課題に向き合う中で、社名の扇に「末広がりで全ての人が幸せに」という祖母マスさんの思いがあったことを知り、経営理念に反映させた。働きやすさを意識し福利厚生も充実させ「製品を使う人や社員を含めて誰かの幸せを下支えしたい」と話す。

 工業で栄えた八潮市も年々製造所が減り「ものづくりを担う者として危機感がめちゃくちゃある」。職人肌の祖父藤造さんのノウハウと、父隆さんが高めた品質を受け継ぎ、「簡単に会社をなくすわけにはいかない。技術を本当の意味で承継していかないと」。日本のものづくりを真剣に考える若い経営者がここにいる。
 

ツイート シェア シェア