埼玉新聞

 

埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(8)】アート工業・吉田祐史社長、住環境軸に多様な展開

  • 畜舎の衛生管理業務をコロナ対応に事業展開したアート工業の吉田祐史社長。手には大活躍した消毒液の噴射機

    畜舎の衛生管理業務をコロナ対応に事業展開したアート工業の吉田祐史社長。手には大活躍した消毒液の噴射機

  • 畜舎の衛生管理業務をコロナ対応に事業展開したアート工業の吉田祐史社長。手には大活躍した消毒液の噴射機

 県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■アート工業(深谷市)吉田祐史社長

 敷地内の倉庫にさまざまなアイテムが並ぶ。小型おりのや伸縮自在のつかみ棒、薬品の入ったボトル、バズーカ砲のような噴射機。これらは害虫駆除・清掃業のアート工業(深谷市)に欠かせない仕事道具だ。吉田祐史社長(51)は言う。「新しいニーズを見つけて、こういうサービスを提供できないかと日々考えている」。時代の変化に合わせて多様な事業展開を図ってきた。

 設立は1991年。もともとはシロアリ駆除とハウスクリーニングの会社だったが、国内の自然環境の変化に伴い、2010年ごろから本格的に害獣駆除に参入した。県内でも年間8千頭以上が捕獲されるアライグマを始め、ハクビシン、ネズミ、ヘビなどはお手のもの。コロナ禍ではウイルスの発生源と指摘されたコウモリの駆除の依頼も増えた。

 売り上げの柱として約4年前から受注するのが畜舎の消毒や衛生管理。県内でも近年、鳥インフルエンザなどの伝染病が発生したが、影響を心配した関東の農家や生産者から依頼が来るようになった。

 そしてこの事業がコロナ禍での福祉施設等の消毒作業につながった。「同じような内容でノウハウがあった。畜舎をやっていなかったら事業展開できなかった」。住宅性能の向上で年々シロアリ被害は減っているが、「自分たちの特性を生かしたサービスを優先したい」と競合の少ない新規事業をスタッフと一緒に考える。今後は不用品処分や遺品整理にも取り組む構えだ。

 それもこれも全て、「生涯安心して暮らせる、住みよい環境を提供します」との経営理念に基づいている。「衣食住のうちの住環境をベースに、新しいアート工業だけのサービスを確立したい」。吉田社長は今日も模索し続ける。

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