埼玉新聞

 

多選自粛条例、埼玉県が廃止提案へ 大野知事、適用しない考え「効力ない」 上田氏「既に有名無実化」

  • 埼玉県庁=さいたま市浦和区高砂

 県は25日、前知事の上田清司氏(現参院議員)が自らの知事の任期を3期までとした「多選自粛条例」を廃止する条例を、12月2日開会の県議会12月定例会に提出すると発表した。

 多選自粛条例は2004年に制定され、上田氏の知事4期目には「条例を破っている」などとして県議会最大会派の自民党県議団が対立姿勢を強めた経緯がある。大野元裕知事は25日の定例会見で「既に効力を失っているのは明らか」と述べ、自身には同条例を適用しない考えを示した。

 同条例は「知事の職にある者は、その職に連続して3期を超えて在任しないよう努めるものとする」などの内容としている。

 大野知事は8月の初当選後、多選について「現時点で申し上げること自体が時期尚早」と表明した上で「私自身が条例という形でそれをすることを、今は考えていない」としていた。

 25日の定例会見では「何期でも立派な実績を残された方もいれば、長期政権になっても評価できる方もいるので、一概に何期でというふうに定めることに意味があるとは思っていない」と述べた。

 上田氏は任期を3期までとすることを公約に掲げて03年の知事選で初当選し、翌04年に知事の多選自粛条例を都道府県で初めて制定。15年の知事選では争点となり、出馬した上田氏は「私個人に課されている努力義務」との見解を示し、県民に是非を仰いで4選を果たした。

 上田氏の主張に自民党県議団は対立姿勢を激化。一般質問では自民議員が、上田氏に答弁を求める機会を最小限にとどめるなどした。

 上田氏は17年12月の一般質問で、同条例について「若気の至りというか、思い上がりがあったのかもしれない」と答弁している。

■自民県議団、意図見極め判断

 県が12月定例県議会に知事の多選自粛条例を廃止する条例を提案することを受け、前知事の上田清司参院議員は埼玉新聞の取材に「既に有名無実化しているので、大野知事の判断を尊重する」とコメントした。

 同条例を巡って上田氏と対立を深めていた自民党県議団の小島信昭団長は「委員会に付託されるだろうから、質疑の場で意図や(提案した)タイミングなどを見極めながら判断していきたい」と説明。

 上田氏については「改廃もせず、『選挙に通ったからいいんだ』という主張ばかりで、後始末もしないで非常に無責任だと思う」と指摘した。

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