埼玉新聞

 

埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(9)】内職市場大宮浅間店・松本賢二社長、挫折した人をサポート

  • 雇用を生み、地域を盛り上げたいと話す松本賢二社長=さいたま市見沼区

    雇用を生み、地域を盛り上げたいと話す松本賢二社長=さいたま市見沼区

  • 雇用を生み、地域を盛り上げたいと話す松本賢二社長=さいたま市見沼区

 埼玉県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■内職市場大宮浅間店(大宮区)松本賢二社長

 業務代行業者の内職市場大宮浅間店(さいたま市大宮区)の店内には約3年前までクリーニング屋だった名残の設備が今も一部残っている。1969年創業のまつもとドライクリーニングから2020年に事業転換。近隣に住む主婦やシニア層を中心とした「内職さん」に梱包や発送などの代行作業を手配している。

 内職市場は愛知県を中心に展開する業務代行業者。同店はフランチャイズ店舗として県内や都内の会社から軽作業などの業務を請け負っている。「内職さん」は35人ほどで、店内の作業場や各家庭で代行作業に打ち込んでいる。

 松本賢二社長(50)は高校卒業後すぐ、父が創業したクリーニング店に入社した。2015年に後を継ぎ社長に就任したが、コロナ禍でスーツを着用する人が減り、打撃を受けた。高コストの大型機材の交換の時期も重なり事業転換を決断。コロナ禍のイベント自粛などが響き当初は仕事が増えなかったが、今年に入り徐々に軌道に乗り始めた。

 内職事業へと転換した背景には、松本社長の経験があった。約20年前、離婚や仕事での父との確執などが積み重なり、心の病で1年半ほど休職した。通院を経て復職したが、「一度挫折してしまった人や家から外に出る勇気がない人にも働く機会を創出し、社会復帰をサポートしたい」との思いを抱くようになった。

 内職を担う人の中にはクリーニング店時代に常連客だった人もいるという。松本社長は「クリーニングと違い地域の人に直接寄り添うことは難しいが、雇用を生み出すことで地域を盛り上げたい」と意気込んだ。
 

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