<川口いじめ>ひどい、警察も信じられぬ…川口市が地裁に証拠として提出した「県警いじめ捜査書類」に虚偽
川口市の市立中学校在学中にいじめが原因で不登校になったのは学校側の対応が不適切だったためだとして、元男子生徒(17)=県立高校2年生=が市に対して550万円の損害賠償を求めている訴訟で、市がさいたま地裁に証拠として提出した武南署の作成した書面の中に、「元生徒が先に加害生徒を蹴った」と事実ではない記載があることが29日、関係者への取材で分かった。県警は内容を訂正し、12月2日に元生徒側に説明するとしている。
元生徒は2015年4月に中学に入学し、当初からいじめを受けていたが、1年生の3学期の16年3月、他の生徒からシャツの後ろ襟首を捕まれて首を絞められ引き倒され、引きずられた。同年10月に被害届を武南署に提出。この行為は18年3月に市のいじめ問題調査委員会がいじめ行為と認定している。
問題の書面は同署の担当者が捜査の経過などを記録した「管理票」。当時の校長が今年7月に同署に対して情報開示請求し、県警が開示した。16年12月20日に、保護者や市教委も出席し学校で開いた会議で、署員が説明した捜査内容が書かれていた。
内容は(1)関係する少年全員から聴取したが被害日時が特定できない(2)加害生徒が原告のシャツを引っ張ったことは全員が認めたが、その前に原告が加害生徒に「2回足蹴りしていた事実があり」原因を作ったのは原告自身と思量された(3)弁護士も母親も理解し、納得した―というもの。
原告によると、同署からは「関係生徒の事情聴取では原告が先に蹴ったということだけはみんなが言うが、いつどこで、どのように蹴ったなど前後の事情がまちまちで一致しない、先に蹴ったということは立証できない」と説明を受けていた。
この会議では、市教委側の意向で警察の説明の間は母親に同行した弁護士の同席が許されなかった。管理票にある「弁護士も母親も理解し、納得した」とあるのは全く事実に反するとしている。
元生徒の母親は「警察という組織がなぜこんな事実と違う記録を作ったのか、その経緯をきちんと説明してほしい」と話す。元生徒は「警察も信じられない。ひどいことだと思う」と訴えている。
同署の奥富真吾副署長は「当時の勤務員に事情を聴くなどして確認作業を進めており、適切に対処する」と説明した。
大津いじめ事件の弁護も務める原告代理人の石川賢治弁護士は「公文書にこのような虚偽記載はあってはならないことで大変遺憾だ。原告に不利な内容で、実害が出ていることも見過ごせない。原因の究明と再発防止を求める」とコメントした。