<熊谷6人殺害>やっとの思いで生きてきた…妻子殺害された男性「訳が分からない」 はだし投げ出す被告
熊谷市で2015年9月、小学生姉妹を含む男女6人が殺害された事件で、強盗殺人と死体遺棄、住居侵入の罪に問われたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)の控訴審判決公判が5日、東京高裁で開かれた。大熊一之裁判長は「被告は心神耗弱の状態だった」として、一審さいたま地裁裁判員裁判の死刑判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。
「納得できない。平等でない裁判という印象」。熊谷市の6人殺害事件で妻と小学生の子ども2人を失った男性(46)は5日、閉廷後行われた会見で、やり切れない思いと判決への怒りを口にした。
男性は事件で妻加藤美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=年齢はいずれも当時=を亡くした。
「無期懲役に処する」。主文が読み上げられた瞬間、固く目を閉じた男性。「やっとの思いで4年半、生きてきた。またゼロからの出発になる」。そんな思いが込み上げた。
1時間以上に及んだ判決の言い渡しでは、男性が厳しい目で裁判官らを見詰める場面も。会見では「大事な家族を亡くし、どれだけ深い傷を負って生きているのか全く分かってない」と裁判官への怒りを口にした。
判決は、被害者を追跡者とする誤った認識などからナカダ被告が殺害に及んだ可能性を指摘。「子どもが襲ってくると考えて自己防衛なんてそんなわけがない。どんな過程でそう判断したのか訳が分からない」と語気を強めた。
男性はこれまで、被害者参加制度を利用して一審のさいたま地裁の公判に全て参加。ナカダ被告の死刑を求め続けてきた。家族への思いを聞かれると、「死刑判決がひっくり返ることはないと思っていたので、何と報告していいのか言葉が見つからない」と沈黙した。
男性の代理人の高橋正人弁護士も「あぜんとした。全く証拠に基づいていない」と批判。8月に行われた被告人質問で、裁判長から訴訟能力に関する質問のみにするよう指示された点にも触れ、「こちらの口を封じておきながら、責任能力の点から減軽とは不意打ちの判決だ」とした。会見では、検察官に上告するように強く申し入れたことも明らかにした。
■はだし投げ出し意味不明の言葉/ナカダ被告
上下黒のスエット姿で入廷したナカダ被告は、両脇を刑務官に囲まれて着席。意味不明の独り言を話し続けていたが、裁判長から「審理が始まったので静かに」と言われると沈黙。開廷後は静かに判決の言い渡しを聞いた。
「被告を無期懲役に処する」。裁判長から主文が読み上げられると、ナカダ被告は再び落ち着きのない様子に。意味不明の言葉を話し始めたが、すぐに話すのをやめて、うつむいた。判決内容が通訳されている間も、はだしを前に投げ出して着席していたナカダ被告。目を閉じたり、天井を見上げたりと判決を聞いている様子はなかった。