<母子殺害>叫び声、ごめんなさいと女性の声 現場見つめる住民ら 仲良い親子…蹴飛ばす音も/さいたま
8日午後6時55分ごろ、さいたま市桜区道場の集合住宅の1室内で、住人の安保王子(きみこ)さん(24)と息子の大翔(はると)ちゃん(3)が血を流して倒れているのを、110番で駆け付けた浦和西署員が発見した。2人は搬送先の病院で死亡が確認された。
浦和西署は、署員に包丁で襲い掛かったとして、王子さんの兄で同居する無職の男(25)を公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕。「ナイフで切り掛かろうとしたことは間違いない」と容疑を認め、2人の殺害についても認める供述をしているという。県警は殺人容疑でも詳しく調べる。
親子の遺体が発見されたのは団地の集合住宅の1室。付近には飲食店やスーパーなどが立ち並び、近隣住民の生活道路となっている住宅前の路上には規制線が張られた。閑静な住宅街での事件に近隣住民たちは驚いた様子だった。
8日午後6時すぎ、女性の叫び声を聞いて110番したという近隣男性(70)は「『ごめんなさい』という女性の声と赤ちゃんの泣き声が聞こえた」と話す。1週間ほど前に男の姿を見掛けたが、「変わった様子はなかったのに」と驚きを隠せなかった。
事件があった部屋と同じ棟に住む女性(57)も8日夜、子どもの泣き声や何かを蹴飛ばすような物音を聞いた。「先週も男の子を自転車に乗せて、仲良さそうに出掛ける親子の姿を見たばかり。子どもの成長を近隣住民も見守っていて、かわいらしい子だったのに」と声を落とした。
同じ棟に住む50代の会社員女性は、8日夜、幼い子どもが担架で救急隊員に運ばれていくのを見た。「叫び声が聞こえたので不安だった。こんな悲惨な事件になって残念」と言葉少なだった。
同じ棟の男性(76)は「以前、男の子に『大きくなったね』と声を掛けると、笑顔を見せてくれた」と話す。「これからの成長を楽しみにしていたのに」と悲しそうに現場を見つめていた。