彩り豊かな「花手水」をカプセルに…缶バッジなど入れたカプセルトイ、川越で人気 「夏の花」の第2弾も
新型コロナウイルス感染拡大以降、寺社の手水舎(ちょうずや)や店先などで、手水鉢の水面を花で美しく飾る花手水の設置が広がった。これをデザインした缶バッジなどを入れたカプセルトイが、今年2月に埼玉県川越市内で発売。静かな人気となっている。製作しているのは、同市砂の障害者支援施設「リンクス川越事業所」の利用者たち。商品のヒットは彼らに工賃アップとやりがいをもたらし、希望の光をともしはじめた。
事業所には川越市と周辺から、主に精神障害や発達障害がある20~60代の男女20人が通っている。同市出身で代表理事の石井浩太さん(34)は、総合電機メーカーの営業職から転身。2018年に開設した。「母が介護や看護の仕事をしていたので福祉に関心があり、地元で誰かのために働きたかった」と話す。
雑貨類製造を受注する事業所は、20年秋に缶バッジ製造を請け負うようになった。石井さんは昨年10月、川越青年会議所のビジネスコンテストで缶バッジのカプセルトイを使った街の活性化を提案。同会議所メンバーで同市小ケ谷の「最明寺」副住職の千田明寛さん(35)がプレゼンテーションを見て、花手水の缶バッジ製作を持ちかけた。
季節の花で彩った花手水をデザイナーが図案化。缶バッジにして法話を付けた第1弾は、最明寺に置いた販売機で2月に発売した。女性や子どもに評判となり、販売場所を増設。1000個以上を売り上げている。事業所の利用者が受け取る工賃も上昇。21年から通所する市内の青木正人さん(46)は、「たくさん売れてうれしい。今日も働いたな、と思いながら毎日帰宅している」と声が弾む。
第2弾は、6月8日から市内3カ所で販売を始めた。アジサイやヒマワリなど、夏の花6種類の缶バッジを製作。うち1種類は、シークレットデザインとなっている。今回はおみくじを封入。石井さんは「障害者が作ったことを前面に出すと、販路と購買層が限られてしまう。フェアに競争すれば、一般の人にも障害者のことを知ってもらえる」と期待。長年、うつ病に苦しむ利用者の市内女性(65)は「一時は人生が終わってしまったと思ったが、今は少しでも社会の役に立っていると感じる」とほほ笑んだ。
販売機は現在、最明寺のほか「彩乃菓」(連雀町)と「mame蔵」(元町)に設置。1回税込み200円。