号泣、転倒、動けぬ教職員…震度6強で学校はこうなる 埼玉・狭山で過去の実例元にリアルな「実動訓練」
震度6強の大地震発生時に学校内で起こり得る事態を想定した教職員の「実動訓練」が19日、狭山市鵜ノ木の市立入間川小学校で行われた。地震学などを専門とする慶応義塾大学環境情報学部の大木聖子准教授の指導で、児童が泣き叫んだり過呼吸になったりする様子をリアルに再現。教職員は、地震直後の現場で相次ぐとみられる子供たちへの対応を確認した。
訓練には同校の教職員約30人と、大木准教授の研究室に所属する大学2年~大学院生の20人が児童などの役で参加。市職員や病院の看護師らが見学した。
大木准教授は、過去の災害で起きたこととして「被災地の教員の手記」を引き、避難途中に失神▽腰が抜けて動けない教職員の発生▽余震で嘔吐(おうと)▽過呼吸が伝搬▽階段で転倒―などを挙げ、けが人の見極めや搬送のケースの順番などを説明した。
訓練は平日の午前10時48分、マグニチュード(M)7・0の首都直下地震が発生し、同校が震度6強の揺れに見舞われることを想定。教職員は3時間目の授業開始直前の時間帯に、それぞれが学校のどこにいるかをイメージし、教室や職員室などに配置した。
「緊急地震速報」が校内に流れ、激しい揺れに襲われると、教職員は児童役の学生に呼びかけて机の下に身を隠した。児童役は大声で泣き「怖い」「帰りたい」などと訴えた。
立て続けに余震が発生する中で、その場から立てなくなったり過呼吸になったりする児童が続出した。教職員は歩けるかどうかを児童に聞いて「大丈夫」「安全な所に行くよ」などと声をかけていた。
伊藤秀一校長は、実動訓練について「イメージ以上の状況が発生しており、今までの避難訓練と丸っきり違っていた。より現実的な避難訓練を行わなければならないと思った」と感想を述べた。
狭山市は7月から文部科学省の「学校安全総合支援事業」を委嘱される予定で、入間川小はモデル校になる。
■余震を想定して「自校の場合は」/大木准教授
実動訓練の指導に当たった慶大の大木聖子准教授は、大規模地震への学校の備えについて「決まった手順の確認だけでなく、自校の場合はどうすれば良いのかをあらかじめ検討しなければならない」と強調する。海に接していない埼玉県での対応には「100%起こる余震を、リスクとして捉えるべきだ」と促した。
大木准教授は、学校での情報共有に関して「入学してくる児童数や校舎の構造、小学校か中学校かで違ってくる」と指摘。今回の訓練は「自校の場合はどう情報を共有するか、どうやってけが人の情報を把握するのかをトレーニングするため」とした。
児童生徒が校庭に集まる避難訓練にも触れ、「学校が倒壊することを前提に、校庭に行くことを目的化している。耐震化されていて倒壊した学校はゼロ」と説明。「余震は100%起こる。おそらく校庭に向かう途中、将棋倒しになることが起こり得る」と、余震を想定することの重要性を呼びかけた。