埼玉新聞

 

高齢者への虐待、過去最多 県内施設で38件、相談や通報は1600件 18年に条例、改善見られず

  • 埼玉県庁=さいたま市浦和区高砂

 厚生労働省は、介護施設の職員による高齢者への虐待行為が2018年度に621件あり、過去最多だったと発表した。前年度(510件)から21・8%増加した。県内施設で発生した高齢者虐待は38件(前年比6件増)だった。また家族など養護者による高齢者虐待と県内市町村が認定したケースは602件に上り、前年より43件増えた。県によると虐待を受けた高齢者は女性が76・1%を占め、虐待者(複数回答)は息子(41・8%)、夫(19・1%)、娘(18・4%)の順に多かった。市町村に寄せられた養護者による虐待に関する相談や通報は1600件(前年比194件増)に上った。

 市町村への相談・通報者は警察(35・7%)が最多で、次いで介護支援専門員・介護保険事務所職員(22・8%)が多かった。虐待の種別(複数回答)は身体的虐待が450件(73・1%)、心理的虐待が244件(39・6%)、経済的虐待は112件(18・2%)、介護・世話の放棄、放任は101件(16・4%)、性的虐待は2件(0・3%)。

 県内施設の事例では、身体的虐待が33件、心理的虐待が15件、経済的虐待が4件、性的虐待が3件、介護・世話の放棄、放任が1件(複数回答)。県地域包括ケア課によると、施設内や養護者による虐待で、死亡ケースはなかった。

 2018年に県虐待禁止条例が施行されたが、同課は「依然増加傾向が続き、改善はあまりないようだ」とみる。県では市町村で高齢者虐待に対応する専門職員の養成や介護施設従事者らを対象とした研修などを実施。虐待通報ダイヤル「♯7171」で虐待の通報を24時間365日受け付け「早期発見、早期対応に努める」としている。

 また、公益社団法人「認知症の人と家族の会」に委託し、家族など養護者が経験者に介護の悩みを相談できる電話相談を実施している。相談件数は16年には346件だったが、17年には412件、18年には624件と増加しているという。

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