<熊谷小4ひき逃げ>情報が欲しい…犯人逮捕に結び付く唯一の方法 母親、ブログでも情報受け付ける
熊谷市で2009年に小学4年の男児が死亡した未解決のひき逃げ事件が今年9月、時効目前での適用罪名変更による時効延長という急展開を迎えた。捜査が継続される一方で、情報提供が減少するなど事件の風化も課題に。母親は「これからの10年を無駄にしてはいけない」と今後を見据えている。
事件は09年9月30日午後6時50分ごろ、熊谷市本石の市道で発生。自転車で帰宅途中の小関孝徳君=当時(10)=が車にはねられ死亡した。16年には道交法違反(ひき逃げ)罪の時効が成立し、今年9月には自動車運転過失致死罪(当時)の時効10年も迫っていた。
母親は今年1月、情報提供を求めるブログを開設。その後も民間の事故調査会社での証拠品の鑑定やビラ配り、8月には署名サイトを通して集めた交通犯罪の時効撤廃を求める約3万筆の署名を法務省に提出するなど活動を続けてきた。現在は、初動捜査の強化や管理体制の徹底なども訴えている。
時効まで約2週間となった9月18日、県警は適用罪名を変更することを明らかにした。危険運転致死罪(当時)で捜査が継続されることとなり、時効は10年間延長されることが決まった。県警交通捜査課によると、未解決の死亡ひき逃げ事件で、自動車運転過失致死罪から危険運転致死罪に罪名が変更されるのは県警で初めてだったという。
関係者の一人は「罪名変更に至るまでには、同様の交通犯罪や既に時効が成立した事案への影響、全国への波及性など検討する点が多かった」と話す。今年夏ごろから罪名変更への具体的な検討が始まり、検察庁や警察庁など関係機関と協議した結果、県警が捜査を継続することを決定したという。
時効間際の決定から数カ月、母親は「罪名変更は通過点」と前を向く。しかし、9月30日以降、母親の元に寄せられる情報提供は減少。「時効が成立していないのだから、10年前は過去の出来事ではない」と母親は訴えるが、多い時は月40件近く寄せられていた情報も10月以降は月約10件に。「とにかく情報が欲しい」と母親の思いは切実だ。
県警に寄せられる情報も時効延長後は少なくなり、捜査関係者は「風化を感じずにはいられない」と声を落とす。「時間の経過とともに証拠もなくなり、記憶も薄れてしまう」。捜査機関にとっても事件の風化は課題だ。
母親は「今までと同じ10年にはしたくない」と強く感じ、犯人逮捕を願い続ける。「逮捕に結び付く唯一の方法が情報提供。一人でも多くの人に情報を寄せていただきたい」と呼び掛け、これからの10年に向かって歩き出している。
母親はブログ「《未解決》熊谷市小4男児ひき逃げ事故!」で、事故後に突然、転居した人や車を廃車にした人など広く情報を求めている。
■熊谷小4死亡ひき逃げ事件
2009年9月30日午後6時50分ごろ、熊谷市本石の市道で、自転車で帰宅途中だった小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が車にはねられ死亡した。道交法違反(ひき逃げ)罪の時効は16年に成立し、自動車運転過失致死罪の時効10年も今年9月に迫っていた中、県警は適用罪名を変更して時効が20年になり、捜査の継続が決まった。
事件を巡っては今年1月、県警が証拠品として保管していた小関君の腕時計を紛失していたことや押収した際に遺族に交付される書類を破棄していたことなどが発覚。事件を担当していた元警部補=定年退職=が公文書毀棄などの疑いで、さいたま地検に書類送検された。