大宮も浦和も「西口」が高値…埼玉県内の路線価、2年連続上昇 オフィス需要や再開発への期待感が反映か
関東信越国税局が3日公表した2023年分(1月1日現在)の埼玉県内路線価は前年比プラス1・6%と2年連続で上昇した。都心への利便性が高い県南部で新型コロナ禍からの回復基調に。一方で少子高齢化など人口減が続く県北部などでは一部を除き横ばいとなった。専門家は上昇基調が県内にも及び、全体としては前年を上回る環境に至ったとみている。
県内の対象地点は15税務署管内の1万5894地点。各税務署の最高路線価の対前年変動率は大宮、浦和、川口など計10地点で上昇。昨年の4地点から大幅に増えた。横ばいは春日部、熊谷など5地点だった。最高路線価の下落が1カ所もなかったのは3年ぶりとなる。
みつば総合鑑定所(春日部市)の不動産鑑定士、三田和巳氏は「不動産取引はコロナ禍で様子見が続き不透明感があったが、昨年あたりから都内の投資需要に引っ張られる形で県内にも波及した」と説明。住宅地では県南部を中心に生活利便性に優れた地域、商業地では東京都境から近い市やさいたま市で需要が拡大。再開発による利便性や繁華性の進展が期待される地域やマンション適地で上昇幅が拡大した。工業地では通信販売の好調で物流拠点の増加などがプラスに寄与した。
県内で最も価格が高かったのは大宮税務署管内の「大宮駅西口駅前ロータリー」(さいたま市大宮区桜木町2丁目)で、1平方メートル当たり475万円。上昇率は8・0%で2年連続でプラスだった。1992年以降、同局管内の6県(埼玉、茨城、栃木、群馬、新潟、長野)で見ると32年連続で最高価格となった。
三田氏は「テレワークの推進で都内のオフィス撤去の動きがあった一方で、大宮駅周辺が受け皿として賃貸需要が底堅く、駅周辺部の再開発への期待感も加わったのでは」と分析した。
県内で2番目に高かったのは「浦和駅西口駅前ロータリー」(さいたま市浦和区高砂1丁目)で210万円。同1丁目と2丁目の一部で行われている再開発事業の期待感の高まりから7・1%上昇した。
今後の動向を三田氏は「ウィズコロナで景気が緩やかに持ち直し、JR京浜東北、高崎、宇都宮の各線沿いの都市部を中心に上昇基調が続くだろう」と見通した。
■路線価
毎年1月1日時点の主要道路に面した土地1平方メートル当たりの評価額。国税庁が毎年7月に発表し、相続税や贈与税の算定基準となる。国土交通省が発表する公示地価や、不動産鑑定士など専門家による鑑定評価額などを基に算定する。公表後に景気変動などで地価が急落し、納税者に過剰な負担が生じることを防ぐため、公示地価の8割程度の水準としている。