埼玉新聞

 

【部活どうなる(9)大会参加資格緩和】選手の取り合いを懸念 学校から出場の生徒、クラブが何度も勧誘も

  • 大会参加資格を緩和した県中体連の事務局=さいたま市浦和区仲町

    大会参加資格を緩和した県中体連の事務局=さいたま市浦和区仲町

  • 大会参加資格を緩和した県中体連の事務局=さいたま市浦和区仲町

 部活動改革に伴い大きく変わるのが、中学日本一を決める全国中学校体育大会(全中)の参加資格の緩和だ。これまでは学校単位での出場が原則だったが、本年度から民間のクラブチームが参加できる特例が決まり、県内でもすでに夏の学校総合体育大会の地区予選で運用が始まっている。

 クラブの参加条件は(1)各競技団体に登録(2)適切な休養日の設定など部活ガイドラインの順守―の二つが大きな柱。他に代表者会議への出席や生徒の引率、競技役員など運営への協力が求められる。同じ生徒が学校とクラブで重複参加はできない。その上で各競技ごとに異なる細則がある。

 県中学校体育連盟(中体連)では19競技を対象に申請を受け付け、審査の結果、10競技41団体を認定した。最も多かった競技は柔道の12、次にバドミントン8、陸上・卓球・バレーボール各4などだった。柔道が多いのは、もともと地域の民間道場を拠点に練習する生徒がいるためだ。学校に柔道部がなく今まで個人戦しか出られなかった生徒が、道場で団体戦に出場できるようになった例もあるという。

 一方、ある競技では特定のクラブ関係者が、学校で出場を決めた生徒に対し、クラブから出るよう繰り返し勧誘したケースも。取りあえず登録したものの、選手が集まらず出場しなかったクラブもあった。競技によっては複数のクラブが上位に勝ち残った。

 そもそも日本中体連が参加資格を緩和した理由の一つは、学校に希望の部活がない生徒の救済だった。しかしあらゆるクラブに門戸が開かれたことで、有力選手を集めた選抜チームが大会に出ることも可能になったと言える。県中体連の猿橋武司理事長は「勝利至上主義を助長するものではない」と強調する。生徒の選択肢が広がる半面、これまで以上に過熱した競争や選手の取り合いが起こりかねない。

 受け入れる側の実情も複雑だ。陸上専門部の担当者は、「陸上は個人競技。クラブで出るか、学校で出るかの問題」とし、「顧問がいなくなったときにクラブに移行する子はいると思う」と予想する。

 実際に県大会が集中するのは7月下旬で、新たな課題が出てくることが予想される。猿橋理事長は、「ガイドラインを逸脱するクラブがないように、しっかりと見ていかなければならない。大事なのは来年度。本年度の反省を踏まえて特例や細則を見直していきたい」としている。

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