所沢出身・大菅岳史さん、国連大使に 最優先課題の拉致解決、世界に訴え 常任理事国入りへ努力
国連の日本政府代表部大使に昨年12月赴任した所沢市出身の大菅岳史さん(57)が埼玉新聞のインタビューに応じ、北朝鮮による日本人拉致問題について「日本の最優先課題で、国際社会に深刻な人権侵害だと訴える」と述べ、解決に向け加盟国などへアピールしていく考えを示した。
日本が戦後の外交課題の一つとしてきた常任理事国入りには「多くの国が目指す中、努力することに尽きる」とした。
拉致被害者や特定失踪者には川口市出身の田口八重子さん=失踪時(22)=ら県内出身者が複数いる。
大菅さんは「安倍総理はいつかは(朝鮮労働党委員長の)金正恩氏と向き合わなければと発言している」と強調。「日本と北朝鮮の間で解決すべき問題だが、北朝鮮を動かすために国連加盟国などの理解を得て、解決に向け声を上げてもらうことが大事」と説いた。
日本はG4諸国(ドイツ、インド、ブラジル)の一つとして、国連で常任理事国入りを目指してきた。「G4以外にも常任理事国入りを目指す国は多く、その中で少しでも日本への理解と支持が得られるよう努力しなければならない」と主張。
日本の若者の内向き志向が指摘される中で「国連関連機関で2・6%にとどまっている日本人職員数を増やすことなどが必要」とも訴える。
所沢市で1972年まで幼少期を過ごした。その後、親の転勤により3年間、ニューヨークに滞在。「所沢のことを思い返すと、発展途上だった当時の日本と豊かな米国との国力の違いの対比を感じる。帰国後、日本と世界の橋渡しをしたいと考えた」と外交官を志した原点を明かす。
中東二課に勤務していた90年にはイラクがクウェートに侵攻。当時在イラク日本大使館の研究員だった大野元裕知事は同課に退避し、部下として一時働いていたという。
2005年には在イラク・サマーワ連絡事務所長代行として、自衛隊の復興支援活動の円滑化に努めた。夏は灼熱、冬は気温が2~3度まで下がる過酷な環境の下、自衛隊は「紛争で生活を破壊された人々を助ける『人間の安全保障』の活動をしていた」と振り返り、「私には非常に大きな経験だった」と加えた。
■おおすが・たけし
1962年所沢市生まれ、東大卒。85年、外務省に入省。大臣官房総務課企画官、中東アフリカ局アフリカ部長、大臣官房外務報道官などを経て現職。