埼玉新聞

 

埼玉の隠れた魅力、各地で発見「すごい」 注目舞台“埼玉回遊”来年3月上演「埼玉はチェンバロ一大産地」

  • 「モッキンカン木の森美術館」で彫刻家しまずよしのりさん(左)に話を聞く近藤良平さん。住宅街の中にある美術館にもかかわらず、数メートルを超える大型作品が並ぶ=6月16日、さいたま市内

    「モッキンカン木の森美術館」で彫刻家しまずよしのりさん(左)に話を聞く近藤良平さん。住宅街の中にある美術館にもかかわらず、数メートルを超える大型作品が並ぶ=6月16日、さいたま市内

  • 新座市に国内有数のチェンバロ工房を構える久保田彰さん。部品組み立てや繊細な装飾は手作業で行われている=6月30日

    新座市に国内有数のチェンバロ工房を構える久保田彰さん。部品組み立てや繊細な装飾は手作業で行われている=6月30日

  • 「モッキンカン木の森美術館」で彫刻家しまずよしのりさん(左)に話を聞く近藤良平さん。住宅街の中にある美術館にもかかわらず、数メートルを超える大型作品が並ぶ=6月16日、さいたま市内
  • 新座市に国内有数のチェンバロ工房を構える久保田彰さん。部品組み立てや繊細な装飾は手作業で行われている=6月30日

 埼玉で一つの作品を―。アーティストが県内の文化を掘り起こし、作品にするというユニークな試みが6月から始まっている。その名も「埼玉回遊」。企画したのは、ダンサー・振付家で知られる彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県さいたま市中央区)の近藤良平芸術監督(54)。「素敵(すてき)な文化」に携わる人や団体と交流し、そこから着想を得て、近藤さん演出の舞台「埼玉回遊〈特大号!〉」を来年3月、同劇場で上演する。多彩な「埼玉」をどのように表現するのか、注目が集まっている。

■劇場外でつながる

 改修工事に伴い芸術劇場が来年2月まで休館する期間を利用した、劇場の外で人とつながるプロジェクト。「地道に生活文化を培ってきた一人一人に出会いたい」との思いから、他薦限定で人・団体を公募。約1カ月間で県内全域から123件の応募があり、近藤さんが書類審査した。

 回遊先に決まったのは▽吉川市内で釣った川魚で自宅に水族館を作った男性▽マタギの文化を現代に伝える横瀬町の企業▽三芳町の「竹間沢車人形保存会」―など23カ所。近藤さんは「埼玉の宝物マップを作っている気分。僕という異分子が働きかけることで、今ある文化の価値を再確認するきっかけになれば」と意義を語る。

 近藤さんは6月から半年間かけ、23カ所を訪問する。9月以降、ダンスなどを取り入れた小規模なパフォーマンスを各地で披露する予定だ。芸術劇場は埼玉回遊の様子を撮影しており、11月ごろパフォーマンスを収めた映像作品をホームページで公開する。

■チェンバロの産地!?

 7月中旬までに、近藤さんは10カ所を取材。そのうちの一つで、近藤さんが「すごいロマン」と驚いたのが、新座市に工房を構える、チェンバロ製作家の久保田彰さん(69)だ。

 チェンバロとはピアノの発明・普及により衰退した鍵盤楽器。約50年前、久保田さんは、バロック時代の音楽家バッハがチェンバロで作曲していたことに興味を持ち、手探りで製作を始めたという。久保田さんによると、埼玉はチェンバロの一大産地とのことで、近藤さんは「ぜひ(作品に)使いたい」と目を輝かせた。

 ほかにも、さいたま市南区の「モッキンカン木の森美術館」では、木の香漂う館内で、彫刻家しまずよしのりさん(79)の大型木彫の作品群を鑑賞。川越まつりの山車の引きまわしで歌われる木やりの稽古を見学した際は、地鳴りのような男性たちの声に圧倒された。

 埼玉回遊で出合ったさまざまな「物語」。近藤さんは「いろいろな生き方、人生を学ばせてもらっている。今は(作品の)イマジネーションを膨らませている最中。出会った人たちを思い浮かべながら、何ができるか考えている」と話している。
 

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