埼玉新聞

 

埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(14)】林塗装工業所・林俊治取締役 2、3年後未来へ投資

  • 「今ある技術に満足すると時代に取り残される。常に最先端を目指す」と意気込む林塗装工業所の林俊治取締役

    「今ある技術に満足すると時代に取り残される。常に最先端を目指す」と意気込む林塗装工業所の林俊治取締役

  • 「今ある技術に満足すると時代に取り残される。常に最先端を目指す」と意気込む林塗装工業所の林俊治取締役

 県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■林塗装工業所(松伏町)林俊治取締役

 「この会社は私たちの人生でした。本当にありがとうございます」

 2014年12月、吉川工場が閉鎖する最後の夜。事務所のボードに書かれた言葉を見て、林俊治取締役(41)は涙した。社長の父正明さんの思いだった。「こういう思いでないと会社はできない。死ぬ気でやらなければ」。急きょ兄2人を呼んで確かめ合った。

 松伏町の林塗装工業所を正明さん、取締役の兄2人と経営する。主な扱いは国内大手メーカーの自動車や家電部品。車はドア周りや内装にとどまらずメーカーのエンブレムや車種の題字も塗装する。

 けんかしないのかと周囲からよく聞かれるが、一つの体に三つの頭を持つ怪獣「キングギドラ」に例えて、「3兄弟が同じようなバランスで、それぞれ将来社長になれるように準備する」と日々の雑談から信頼関係の構築を心がける。

 自動車業界は景気の影響を受けやすく、東日本大震災の後は受注が約3割減った。近年は半導体不足で生産が一気に落ち込んだ一方、今年3月には1・3倍まで回復。「車の開発は数年前から始まる。今、新規の話に乗らないと2、3年後に仕事がなくなる」と常に先を見据えて営業する。

 だからこそコロナ下でも数千万円の塗装ロボットを導入する設備投資に踏み切った。数年前から準備して国の補助金を申請。1・7倍の生産が見込める。「仕事に先回りして投資する。時代の半歩先を進まないと」。在宅で需要が増した大手チェーンの宅配ボックスの塗装も受注した。

 1957年に祖父が都内で創業。90年に株式会社化し、吉川、松伏への工場移転を経て事業を継続してきた。目指すのは100年企業。「他社を寄せ付けない圧倒的な技術力と品質力で選ばれる企業に」。俊治取締役は未来を見る。
 

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