「最強の雑草」vs市民…茎の断片からでも根を張る「ナガエツルノゲイトウ」 戸田の荒川で駆除作業
埼玉県戸田市の荒川で、根絶が求められる特定外来種のナガエツルノゲイトウの駆除作業が行われた。猛暑の中、市民ら約10人が汗を流した。現場は国道17号の戸田橋の下の河川敷。集まったのは、県生態系保護協会の蕨戸田支部長の石本誠さん(73)の呼びかけに応じた人たち。荒川下流河川事務所の地域連携課の専門官、水田泰子さん(52)も職員2人とともに参加した。
「これがナガエツルノゲイトウです」と、県生態系保護協会(本部・さいたま市大宮区)の前田博之事務局長(47)が足元に広がる緑の葉を指した。白い花は大きさも色もシロツメクサに似ている。
午前9時ごろから11時ごろまで2時間かけ、戸田橋の下で作業。スコップで根を丁寧に掘り出し、茎の切れ端も逃さずにビニールの袋に入れ、法令(外来生物法)に従って密閉した。
「繁殖力が強く、茎だけでも流れ着いた先で根を出すんです」と石本さん。「根が長くて、どこまで行くんだろうって思いながら掘った」と戸田市の会社員菊池祥子さん(36)。戸田市民でもある荒川下流事務所職員の崎岡らけるさん(24)は「こんなに大変だとは思わなかった」と驚いていた。
ビニール袋は19個にまでなった。一つを持ち上げようとしたが、重くて片手では持ち上がらない。50キロ以上はあると見られた。その後、市によってごみ焼却場に運ばれた。
石本さんら市民グループが2021年夏に戸田橋付近で発見、さらに下流の川口市の河川敷でも確認していた。
■水田で最も注意
全農埼玉県本部は23年1月にナガエツルノゲイトウについて「最強の雑草」として注意を呼びかけた。「水田で最も注意するべき雑草で、茎の小さな断片からも発根し拡散能力が高い。広がれば取水、排水施設に害があり、稲の生育を阻害する」とした。
南米原産で、農水省や環境省などのデータでは、国内ではこれまで茨城、埼玉から沖縄までの22都道府県で確認されており、今後は東北など全国に広がる可能性があるとされる。気候変動による大雨被害が続発する中、内水氾濫の原因植物にもなりうる雑草で、根絶対策が急務だ。
県内では研究者の上原歩氏により17年に坂戸市内の越辺川、18年に川口市の芝川で発見された報告がある。上原氏と東京電機大学の学生らによる実態調査も越辺川で行われた。