埼玉新聞

 

小説家・京極夏彦さん、“あやしい”世界に700人引き込む 桶川で講演会「一度自分をあやしんで」

  • あやしい話で会場を沸かせた京極夏彦さん=桶川市民ホール

 「一番あやしいのは自分自身。一度自分をあやしんでみよう」。桶川市のさいたま文学館の響の森 桶川市民ホールで8日、「百鬼夜行」シリーズなどの妖怪ミステリーで知られる小説家京極夏彦さんの「“あやしい”特別講演会―怪談、妖怪、またはミステリー」が行われ、約700人が“あやしい”世界に引き込まれた。

 京極さんはトレードマークの和服姿に指ぬきグローブ姿で登場。「あやしいと思った人の中に基準がある。何もあやしくなくても、あやしいと思う人から見ればあやしい。見る人が決めること」とまずは「あやしい」の定義について持論を展開した。その後、「怪」「異」「奇」「妖」のあやしいと読む漢字についても説明。「どれを組み合わせてもあやしさが増すだけ」と言って会場を沸かせた。

 さらに「妖怪」が、かつては今と違う意味で使われていた歴史をひも解き、明治時代の「妖怪学」や柳田国男が研究した「風俗学」などを例に挙げ「妖怪」のとらえ方の変遷を面白おかしく話した。

 そして「私たちはアバウトな認識の上で生活している。あやしい話はウソか本当か分からない話のこと。あやしいはグレーゾーン。ありもしないルールを持ち込んで白黒つけなくていい。グレーゾーンがなかったら人間は生きていけない。あやしむならまず自分を」と笑わせた。

 さいたま市から参加した女性(50)は「とても面白かった。正しいと思っていることも思い込みかもしれないとあやしんでみることにします」と笑いながら満足げに会場を後にした。

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