地震で倒壊の危険…上尾市、保育所を休園へ 専門家が補強案の提案も休園決定 急な対応に保護者ら不満
上尾市の上尾市立しらこばと保育所が耐震診断の結果、地震で倒壊や崩壊の危険があるとして、市は急きょ今年4月からの休園を決めた。その上で来年度通所予定だった48人の児童については、しらこばと近くの上平保育所に転園して保育を継続する方針を示している。耐震診断では、設計通りに施工されていない施工不良箇所が数カ所あると指摘されており、築48年のしらこばと保育所は事実上閉鎖となる。しかし専門家から補強案などが提案されているにもかかわらず、早々に休園を決めた市の対応に保護者らは「準備期間が少な過ぎる」「説明が足りない」と不安や不満の声を上げている。
市施設課によると、本年度はしらこばとと上平の両保育所で耐震診断を実施。埼玉建築設計管理協会の判定委員会が昨年12月10日に提出した判定票では、しらこばと保育所は耐震指標のIs値(建物の粘り強さに形状や経年を考慮し算出される値)が0・23(2階部分は0・13)と、標準値0・6を大きく下回り、非常に危険と診断された。さらに設計図通りに施工されていないとの指摘もあった。
同保育所は1972年に建築された鉄骨構造。柱や梁(はり)などの溶接箇所や部材自体の強度が現在の基準に比べると大きく不足しているという。診断を請け負った桑子建築設計事務所の桑子喬会長は「設計図と違う溶接工事が行われていて、この溶接技術が稚拙だったことでIs値が低くなった。当時は超音波を当てて内部を確認する非破壊検査ができなかったために見過ごされた」と分析している。
耐震診断は、現地調査などを経て構造計算を行い、その結果を第三者機関の判定委員会に諮るため、Is値の公表まで6カ月を要した。判定票には壁プレースの取り換え、新設などの補強案も提案されていたが、市によると仮設園舎の建設に1億3千万円の費用と半年の工期がかかり、保育に影響が生じることから断念。さらに市の長期計画では単独での公共施設建設はないという。
移動を予定している上平保育所は、78年建築の鉄筋コンクリート造り。Is値は0・72と基準をクリアしているが、来年度通所予定児童は計115人。定員80人の施設で約1・5倍となる。ホールを5歳児室として利用したり、月齢による混合保育などで保育環境を整え、新たにホール建設を2020年度予算に計上する予定。