路線バスで乗客と貨物を一緒に 客貨混載、国際興業とヤマト運輸が飯能で開始 交通インフラ継続へ協力
国際興業(東京都)とヤマト運輸(同)は25日、飯能市中心部から山間部の旧名栗村地域などを結ぶ路線バスで乗客と貨物を一緒に運ぶ「客貨混載(きゃくかこんさい)」を始めた。両社によると同様の事業は全国各地で行われているが、県内では初めて。国際は乗客が少ない時間帯の貨物輸送で収入を得て路線バス維持につなげる。ヤマトはドライバーの運転時間の短縮など負担軽減を図る。
客貨混載は平日のみ行われる。ヤマトの飯能支店(飯能市落合)が国際の飯能営業所(同市柳町)に荷物を持ち込み、飯能駅午後2時25分発湯の沢バス停(同上名栗)行きの便で運ぶ。途中、尾長入口バス停(同原市場)と上赤沢バス停(同上赤沢)で、ヤマトの配送員に荷物を渡す。バスにはクール便対応を含む宅配便用の箱を三つ用意した。
ヤマトはこれまで、同支店から約10キロ地域の中藤と原市場の2地区周辺を配送車2台、約30キロの名栗地域を1台が1日各2往復していた。バス活用で各1往復に減らせるほか、ドライバーの休憩時間の確保や省エネの利点もある。輸送代はヤマトが国際に支払う。
飯能市によると、市の人口は旧名栗村を編入した2005年の8万4242人をピークに下降し、10年は8万2309人となった。名栗地域は編入時が2612人も、10年は2297人となり、市内の山間地でも人口減が進む。
国際は11年6月当時、同駅を起点に複数の路線バスを運行していた。しかし少子高齢化や人口減少などを背景にした利用者減や燃料費の高騰により、13年3月末に同営業所の撤退を市に申し出ていた。
市では、国際からの申し出前から名栗地区方面などの路線向けに年間1300万円の補助金を支出していたが、路線バス運行を継続させるため、12年から2千万円追加。14年には両者で路線バス継続に関する協定を結び、さらに3千万円を増額。14年以降は年間6300万円を支出し、路線バスは運行している。
国際では、今後も山間地の人口の減少傾向が見込まれ、路線バス維持には新収入源の確保が必要であることから、対策を検討してきた。その中でヤマトが関越交通(群馬県)と18年から同県沼田市などで導入の客貨混載に着目し、連携を打診。視察や国土交通省などとの協議など、調整を続けてきた。
25日には出発式が開かれ、国際の南正人社長は「今後も市内の路線バス継続へ、懸命に各種施策を展開する」とし、ヤマトの片山博樹執行役員は「地域の皆さまの大切な交通インフラの継続へ協力を深めたい」と力を込めた。飯能市の大久保勝市長は「市民に導入して良かったと素晴らしい評価を得られるよう連携に努めてほしい」と述べた。