<新型肺炎>混乱広がる学童保育 これで良いのか…マスクなく消毒液は私物、感染リスク高まる恐れも
新型コロナウイルスの感染拡大による小学校の臨時休校で、原則開所するよう要請された県内の放課後児童クラブ(学童保育)に混乱が広がっている。開所時間拡大で人手不足のやりくりに四苦八苦する学童保育も。触れ合う機会が多いため、長時間の預かりに伴い感染リスクが高まる恐れも指摘され、懸念の声が上がっている。
■準備期間ない
「マスクも消毒液も配布せず、学童保育に丸投げ。初めて直面する事態なのに、準備期間もない」。県北部で30人余りを預かっている民営学童保育施設の女性支援員は、小学校の臨時休校に伴う児童の受け入れを要請した政府の対応に困惑する。
夏休みなどの長期休暇中と同じ午前中から子どもたちを預かることになり、普段は事務作業を担当している支援員も現場に投入。それでも人手が足りず、研修で訪れたことのある大学生ボランティアに応援を求めた。保護者には利用時間の短縮を要請し、何とかやりくりしている。
安全確保への配慮も平時とは比べ物にならない。家庭からマスクを持参してもらっているが、中には確保できず着用していない子も。消毒液はほかの支援員の私物を施設で使わせてもらっている。保護者には体温が37度を超えたら登所しないよう通知。預かり中も、子どもたちの体調に少しでも異変を感じたら、すぐに検温している。
ただ、施設の性質上、予防の効果は限定的だ。絵本の読み聞かせを始めると、途端に子どもたちは体を密着させて歓声を上げる。時間帯によっては身動きが取れないほど密集することもある。
女性支援員は「学童保育は子どもたちを集団で遊ばせる場所。離れてじっとしているように命令はできない。感染を防ぐための臨時休校なのに、これで本当に良いのか」と複雑な胸中を明かした。
■7時半に開所
さいたま市緑区の学童保育「三室あおぞら」は3日から、午前7時半の臨時開所を始めた。市立三室小学校が午前8時半~午後3時半までの在校時間帯に児童を預かるため、登校前の見守り活動を行う。
あおぞらの稲垣健治支援員(57)は「8時半に子どもを学校まで届けると、仕事先に間に合わない。朝も開所してほしい」と保護者から要望を受けたと語った。午前7時半すぎ、通勤前の保護者に連れられた児童たちは、登校時間まで、遊具遊びや自主学習などで自由な時間を過ごす。
2年生の男子児童(8)は「教室には4人ぐらいしかいないから、つまらない。学童保育で遊ぶ方が楽しい」と話す。卒業式を間近に控える6年生の女子児童(12)は「クラスのみんなと一緒に過ごせる時間はあとわずか。これ以上、休校期間が伸びないでほしい」と願っていた。
学童保育に多くの児童が集まる現状について、県学童保育連絡協議会の森川鉄雄事務局長(62)は「学童保育は遊ぶ時間が多く、人と触れ合うため、余計に感染率が高まる恐れがある」と懸念。「学校は学童保育と違い、体育館や保健室など、さまざまな施設が整っている。児童たちの感染リスクを下げるには、校内の広い空間を利用した方がいいのではないか」と話した。