埼玉新聞

 

前方後円墳の定説に疑問…荒俣宏さん、独自の考え語る 川口で講演 280人来場、古代のロマンに思い

  • 金錯銘鉄剣銘文の発見によって「(歴史の認識が)200年前倒しになった」と語る荒俣宏さん=川口市のSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

 県が企画して制作された映像作品「古代へのいざない 国宝・金錯銘鉄剣」の完成に合わせた講座が、川口市上青木3丁目のSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザで行われた。作品の上映後、作家で博物学者の荒俣宏さんの講演が行われ、前方後円墳などについて独自の考えを語った。

 昨年は行田市の埼玉古墳群の稲荷山古墳の発掘が行われて50年、金錯銘鉄剣の銘文が発見されて40年。映像作品は県が企画し、デジタルSKIPステーションが制作した。鉄剣の銘文や歴史的意義、埼玉古墳群などについて解説している。

 講演で荒俣さんは、鉄剣の銘文発見によって畿内政権の支配が関東まで及んでいたことが分かったとし、「大化の改新以前、地方は遅れていたという印象が払拭(ふっしょく)された」と意義を語った。

 また、稲荷山古墳など国内の古墳に多く見られる前方後円墳が、四角の方墳に丸い円墳が付いたとする定説に疑問も。中国から伝わった思想で、不老不死の神仙が住むとされれる蓬莱(ほうらい)山について紹介。被葬者の不死を願って「(前方後円墳の形には)蓬莱山のイメージが投影されているのでは」と述べた。

 そのほか、行田市立博物館学芸員の浅見貴子さんをゲストに招いたトークショーも。市内の至る所に遺跡がある発掘裏話や、足袋やご当地グルメも含めた行田の魅力を語った。会場には約280人の来場者が詰め掛け、古代のロマンに思いを寄せていた。

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