埼玉新聞

 

<高校野球>花咲徳栄、試練乗り越え成長を 目の前の目標が消滅、岩井監督「この経験きっと役に立つ」

  • 選抜大会中止が発表される直前まで打撃練習をする花咲徳栄の選手たち=11日午後、同校グラウンド

 新型コロナウイルスの感染拡大のため、第92回選抜高校野球大会が史上初めて中止に追い込まれた。大会では、県勢の花咲徳栄が出場校に選出。選手たちは19日の開幕を見据え、準備を進めてきた。ところが、冬に重ねた鍛練の成果を試す大舞台は突如消滅。4年ぶり5度目の“春”は、戦わずして幕を閉じた。

 選抜大会出場は、今年のチームにとって大きなモチベーションになっていた。エース高森は、昨夏の全国高校選手権初戦の2回戦で決勝打を浴びた甲子園のマウンドに戻るためにフォームを改善。球のキレを磨いた。投手陣のリーダーとしても、「周りのことがよく見えるようになった」と口にするほど、心身ともに成長している。

 打線の中軸に座る井上は、昨年12月から主将を任されると冬場の練習を先頭に立って引っ張り、チームの雰囲気を変えてきた。「今までは必死さが足りなかった。試合を左右するのが4番」と井上。中心選手の自覚も芽生えていた。

 その井上を右翼手から三塁手にコンバートするなど、昨秋のオーダーに比べ守備位置の変更や選手の入れ替えが幾つもあった。それはチーム内の競争が激しくなり、全体が底上げされてきた証拠だ。「井上も三塁手らしくなってきた」と岩井監督が笑みを浮かべるほど、仕上がりは順調そのもの。指揮官が珍しく甲子園の登録メンバー選出を悩むぐらい選手層の厚みは増し、選抜大会の過去最高成績だった2003年の8強を超える期待も抱かせた。それだけに悔やまれる中止だ。

 目の前の目標がこつぜんと消えた喪失感は計り知れない。それでも、岩井監督は「この経験ができたのも32校だけ。きっと役に立つはず」と前を向く。夢舞台に立てなかった悔しさを力に変えて試練を乗り越え、徳栄ナインはさらに成長してくれることだろう。

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