JR北浦和駅の西口周辺でアート巡る 近美の話題作、ダイナミックな噴水、日本一長いけやき並木、人気パンも
JR北浦和駅西口を出ると、前方にこんもりした緑が見える。かつては埼玉大学があった場所で、移転後の1974年に北浦和公園として生まれ変わった。園内には県立近代美術館(通称・近美)があり、野外彫刻を含め、さまざまなアートに触れることができる。また、歴史を振り返る史跡も点在している。
公園入り口前の交差点の手前には、駅西口開設と埼大道路貫通の記念碑がそれぞれ立っている。園内に足を踏み入れると、それまでの喧騒(けんそう)が薄れて気分もゆったり。子どもが走り回り、のんびり散歩する人たちが憩う。
彫刻などアート作品が随所に展示され、思わぬ所で楽しい遭遇があったりする。大学の正門跡や校歌の碑もあるほか、茂みには同大が師範学校だった頃の卒業生下總皖一(しもおさ・かんいち)の「たなばたさま」の歌碑も。
見ものは池の噴水。春にはカルガモ親子が訪れる一見普通の池だが、定刻を迎えるとがらりと様子が変わる。クラシックなど季節ごとの音楽プログラムにのって、水がダイナミックに踊り出す。午前10時~午後8時(9月~2月は午後6時まで)の偶数時刻に約10分間のショータイムが繰り広げられる。
82年に開館した近美は、建物自体がアート作品。建築家黒川紀章氏が初めて設計した美術館でもある。コンクリートの堂々とした外観はどこか温かみも。黒川氏による白いキューブ型の話題作品「住宅カプセル」も移設されている。
巨匠の作品から漫画を含むポップカルチャーと、バラエティーに富んだ展覧会を手がける同館の名物は、椅子の常設展示。真っ赤な唇を思わせるソファなど個性豊かな椅子たちは、自由に座って身体で鑑賞できる。
美術館の南側はさいたま市営浦和北公園。渋沢栄一ゆかりの名を持つ「恭慶館」や日本庭園がある。テニスコートやゲートボール場なども併設する同公園敷地には21年から28年間、旧制浦和高等学校があった。一方で、公園の当初の名称は「浦和老人公園」。秋の七草を含め万葉集に詠まれた草木が植えられ、今や呼び名も懐かしい「バンカラ像」も。横に立つのは市天然記念物カイノキだ。同校の先生が93年に中国から持ち帰った種から育ったとされ、像と共に今を見守る。
美術館横の出口から公園を出て右に進んだ先は埼大通り(国道463号)。すぐ前の歩道橋に上がると、さいたま国際マラソンのコースにもなっている「日本一長いけやき並木」が眺められる。北浦和駅西口を始点に所沢市までの全長約17キロに約2400本のケヤキが植えられている。
歩道橋を下りて北浦和駅に戻る途中、「浦和ふれあい館」の2階でひと休み。喫茶ルーム「あかしあの森」では福祉事業所が作るパンが人気だ。その場で食べることもできる。おなかを満たした後は焼き菓子をお土産にしてもいい。
【メモ】喫茶ルーム「あかしあの森」土日祝日休み。午前11時~午後4時半。(電話048・829・7905、浦和ふれあい館)