埼玉新聞

 

<新型肺炎>蔵造りの町並み閑散、観光地・川越も客足途絶える 市内での死者に危機感「人ごとでない」

  • 閑散とする蔵造りの町並み=28日午前11時ごろ、川越市幸町

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、不要不急の外出の自粛が求められた28日、県内や都内の観光地、繁華街は人出がなく、閑散とした。桜が満開を迎えた週末を多くの人々は自宅で過ごし、災禍がこれ以上広がらないように努めた。

 蔵造りの町並みで知られ、連日、国内外の観光客でにぎわう、川越市幸町の一番街商店街は、人影がまばらで閑散としていた。営業を行う店舗がある一方、臨時休業の張り紙が貼られ、シャッターを下ろしている店舗や観光施設も目立った。

 人力車で観光案内する「いつき屋」の富岡勇樹代表(37)は、「運行中止も考えたが、営業を続けている店もあるし、観光を楽しみたい人もいる」と、人員を減らして臨んだ。

 毎年この時期は年配層を中心に利用者が増えるが、今月上旬から客足が一気に途絶えてしまったという。「これだけ感染者が増えているから仕方がない。今は我慢の時」と気持ちを切り替える。

 和菓子いも恋で有名な「菓匠右門」一番街店、時の鐘店の畑川和子店長(59)は「普段より何十倍も客足が少ない。本来であれば商店街の催しが行われ、たくさんの観光客でにぎわう予定だった」と声を落とした。

 この日は店頭販売の量を減らして営業した。「1月下旬の春節までは外国人観光客も多く訪れていた。今思うと、あの時期から規制を強化するべきだったのではないか」と話していた。

 さいたま市大宮区の60代男性は、新潟県から遊びに来た友人と観光を楽しんでいた。「外出自粛は分かっていたが、友人と会えるのは年に1度だけ。本来なら浅草や上野など東京案内も予定していたが、さすがに断念した」と苦笑い。

 川越市の主婦(41)は「桜満開の時期に、街がにぎやかにならないのは残念」と話したが、「昨日、市内でも(感染による)死者が出たと聞き、ますます人ごとではないと実感している。特に年配者への気遣いを大事にしたい」と危機感を口にした。

 一方、川越駅と本川越駅を結ぶ通り沿いの商店街「クレアモール」では、一番街よりは多くの人の姿が見られた。若者が中心で、近くの百貨店は閉まっていたものの、営業を続けている小売店などを訪れていた。

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