埼玉新聞

 

自爆営業…郵便局員が自殺、達成困難なノルマ さいたま労基署は労災認定せず、埼玉労働局が労災認定

  • 記者会見する亡くなった男性の妻(右)=1日午後、さいたま市浦和区

 さいたま新都心郵便局(さいたま市中央区)に勤務していた男性=当時(51)=が、2010年に自殺したのは、業務上のストレスでうつ病を発症したことが原因だったとして、埼玉労働局の労災保険審査官が労災認定したことが1日、分かった。男性の妻(52)は同日、さいたま市内で会見し、さいたま労働基準監督署の判断を取り消す決定に「正しい判断をしてくれた。二度と社員や社会を裏切ることのないようにしてほしい」と再発防止を訴えた。

 「仕事が死の原因だったと認められた。ここまでの時間は長かった」。男性の妻は会見で、夫の死からの月日を振り返った。

 遺族側の代理人弁護士によると、男性は1982年から県内の郵便局に勤務。06年5月にさいたま新都心郵便局に異動になると、郵便物の配達や年賀状の営業などを担当。過重なノルマなどが課せられ、08年にうつ病を発症した。その後、計3回にわたり病気休暇を取得。復職から約半年後、同局4階から飛び降りて死亡した。

 同局では、年賀ハガキ1人7~8千枚の販売ノルマを課して、売れ残りを社員が買い取る「自爆営業」や、ミスをした理由を大勢の社員の前で報告させる「お立ち台」などの行為が行われていたという。

 遺族は15年、さいたま労基署に労災を申請。17年に労災保険の不支給が決定したことを受け、同年、埼玉労働局に審査請求を申し立てていた。

 労災保険審査官は、達成困難なノルマが課されていたことなどを認定。業務上のストレスで発症したうつ病が原因で、自殺に至ったと判断した。

 妻は「生きていたら昨日で定年だった。家族のために働いてくれた夫に『ありがとう』と伝えたい」と話した。

 日本郵便は「社員が自殺したことを重く受け止め、今後は社員の声に真摯(しんし)に向き合うことを徹底していきます」とコメントした。

 遺族は13年、日本郵便に損害賠償を求めて、さいたま地裁に提訴。16年に和解している。

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