火災で高校生が逃げ遅れ…通りかかった男性、煙渦巻く出火現場へ飛び込み救う 川口市の消防長が表彰
昨年12月、川口市芝で燃え上がる民家の3階に逃げ遅れた男子高校生がいた。通りかかった男性が「そこはだめだ。2階のベランダへ下りろ」と叫んだ。男性は民家に飛び込み男子高校生を助け出した。
同市の小倉務消防長は、この男性に表彰状を贈り「人を助けたいという強く熱い気持ちを感じる。冷静な判断と勇敢な行為が男子高校生の命を救った」と男性の行動をたたえた。
男性は同市芝に住む会社役員酒井宏彰さん(44)。火災は12月23日午前11時半ごろ、民家の3階から発生し、木造3階建て住宅の3階部分が焼けた。
酒井さんによると、知り合いの家を訪ねた帰りで、自宅へ向かって歩いていると、民家が火事だった。近くにいた人に119番通報は既にしたことを確認すると、酒井さんは行動を起こした。
「3階のベランダから男子生徒が飛び降りようとしているのが見えた。でも、そのまま飛び降りると1階に落ちる。『そこはだめだ。2階のベランダへ下りなさい。今そこへ行くぞ」と叫んで、民家の中へ飛び込んだ。裏手の階段を駆け上がると、姉妹らしい2人が『どうして燃えてるの』って泣いていた」
少女たちは男子高校生の姉と妹だった。酒井さんは姉妹に「早く下に逃げなさい」と言い、階段を3階へ駆け上がった。そこは出火現場の階で熱気と煙が渦巻いていた。男子生徒は表側のベランダにいるはず。酒井さんはドア越しに「お兄ちゃーん」と2回呼び掛けたが返事はなかい。
酒井さんは階段を駆け下りて2階のベランダへ回った。するとそこへ上からドスンと男子生徒が飛び降りてきた。
「ベランダには物干しざおもあって、上から下りるのは怖かったと思う。見ると手から血を流し、けがをした様子だった。『大丈夫か。歩けるか』と声を掛けると『大丈夫』と言った。彼に肩を貸して下へ下りた。下では近所の人たちが布団を持ち出して、彼が飛び降りたら助ける準備をしていた」
それから、酒井さんは「火を消さなくちゃ」と思い返して、駆け出そうとしたが、ちょうど、遠くからサイレンが聞こえた。消防車が近づいてくるのが分かった。その時になって足が震えた。振り返ると激しく燃えるのが見えて、よくあんな所へ行ったな、と思った」と振り返った。
119番通報は午前11時34分。消防車の現地到着は同11時41分だった。酒井さんの行動は7分間のことだった。
酒井さんは火の粉をかぶったため、目の下に少しやけどをしたが、今は治ったという。
小倉消防長は「酒井さんの行動に、目の前の人を助けたい、という熱い気持ちを感じる。勇気ある行動に感謝したい」と話した。