埼玉新聞

 

知人女性殴り車ではねる…ストーカー男に執行猶予判決 被害者が涙「怖い」 地裁「更生の機会与える」

  • さいたま地方裁判所=さいたま市浦和区高砂

 北本市で今年1月、ストーカー規制法に基づき警告を受けた男が知人女性を殴り車ではねたとされる事件で、傷害の罪に問われた加須市久下、無職の男(62)の判決公判が10日、さいたま地裁で開かれた。蔵本匡成裁判官は懲役2年6月、保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役2年6月)を言い渡した。

 3月25日に結審したが、4月8日の公判で、検察側は留置所で男が書いていたノートを新たな証拠として提出。殺人を計画するメモがあり、被害女性ら関係者の名前が記されていたとされる。

 この日の被告人質問で、男は、ノートの内容を小説に応募するための原稿だったと供述。「ストレス解消のために書いた。あくまでフィクションとして書いた」などと弁明した。

 被害女性が意見陳述。遮蔽(しゃへい)板で囲われ、被告、傍聴人から見えない位置で、女性は「怖くて日常生活を送れない。(事件に)巻き込んでしまった方々のためにも重い刑罰を望みます」と涙ながらに訴えた。

 検察側は、前回の懲役2年より重い同2年6月を求刑。弁護側は改めて執行猶予付き判決を求めた。

 判決で蔵本裁判官は、被害女性の顔を殴り車ではねた犯行に触れ「執拗(しつよう)かつ悪質で危険。被害は軽くない」と指摘。一方で「被告が犯行事実を認めている。社会の中で更生の機会を与える」などと執行猶予付き判決を下した理由に触れた。宣告後の説諭で同裁判官は「被害者に接触しない、危害を加えないことはもとより、名誉毀損、プライバイーを侵害しないなど必ず約束を守るように」と厳しく戒めた。

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