埼玉新聞

 

5歳死亡 誰も助けず…女に追い出されぬよう暴行した母に懲役10年 男は懲役12年 投げ倒され息絶えたわが子

  • 5歳男児の遺体が見つかった住宅=2022年3月6日、本庄市本庄

    5歳男児の遺体が見つかった住宅=2022年3月6日、本庄市本庄

  • 5歳男児の遺体が見つかった住宅=2022年3月6日、本庄市本庄

 昨年1月、本庄市の住宅で柿本歩夢ちゃん=当時(5)=を暴行し死亡させ、遺体を床下に遺棄したなどとして、傷害致死や死体遺棄などの罪に問われた母親の柿本知香被告(31)と同居人の丹羽洋樹被告(36)の裁判員裁判の判決公判が8日、さいたま地裁で開かれ、北村和裁判長は柿本被告に懲役10年(求刑・懲役12年)、丹羽被告に懲役12年(求刑・同15年)を言い渡した。

 北村裁判長は判決理由で、無抵抗の歩夢ちゃんに対して執拗(しつよう)に行われた暴行について「相当危険な態様としてかなり悪質」と強調。「わずか5歳で、誰にも助けてもらえずに息絶えた歩夢ちゃんの肉体的、精神的苦痛は察するに余りある」と述べた。

 さらに柿本被告について、犯行の意思決定が同居の石井陽子被告=傷害致死などで起訴=の指示を受けた側面があることは否定できないとしつつも、「母として身をていしてでもわが子を守るべき立場にありながら、他に取り得る選択肢があった中で結局は自らの判断で虐待に加担し続けたと言わざるを得ない」と指摘。丹羽被告については「しつけの名を借りた暴行は身勝手で無責任と言うほかない」とした。

 柿本被告の弁護側は、石井被告の指示を拒否すれば身寄りがないにもかかわらず家を追い出される可能性があったことなどを挙げ「石井被告の存在が大きな影響を与えていた」として懲役4年を求めていた。

 丹羽被告の弁護側は、一連の暴行は男児らへのしつけの意図があったとし、石井被告自身が保育士だったと自称していたことなどから、暴行の指示に疑いを持たなかったとして懲役8年が相当と主張していた。

 判決によると、両被告は石井被告と共謀の上、昨年1月18日、本庄市内の住宅内で柿本被告の長男歩夢ちゃんを投げ倒すなどの暴行を加え死亡させ、翌19日に住宅の床下に穴を掘り遺体を埋め、丹羽被告は2021年2月28日、同住宅で別の男児に対して暴行を加えた。

■視線落とし、うなずく

 8日午後3時前、台風の接近による悪天候の中にもかかわらず、さいたま地裁には傍聴券を求めて多くの人が列をなした。

 注目が集まる中開かれた判決公判で、柿本被告は白色の上衣に黒色ズボン姿で終始視線を落としていた。白シャツ、黒スラックスの丹羽被告は傍聴席に一礼してから入廷。席に着くと何度か傍聴席に目を向け、落ち着かない様子だった。

 北村裁判長が主文を言い渡した際、両被告は前を向いたままだったが、その後量刑の理由が読み上げられると、柿本被告は時折目を閉じ小さくうなずくような仕草を見せた。
 

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