<新型コロナ>オンライン授業、趣向を凝らす教育現場 配信する教師を在宅勤務の教師がフォロー
新型コロナウイルス感染防止のため、休校を続けている小中高校。生活リズムの乱れや、学習の遅れなど子どもたちの日常に出ている影響を少しでも緩和させようと、県内の教育現場では、趣向を凝らしたライブオンライン授業が展開されている。
「みんな集まったかな。じゃあ始めるよ」。今月中旬の9時半ごろ、さいたま市中央区のフリースペース「しばふハウス」の片隅で、オンライン授業の配信が始まった。テーマは「みんなでからだを動かそう」。自宅で視聴する画面越しの十数人の子どもたちに向けて、配信者でしばふハウス代表の三尾新さんが、自ら体を動かし、室内での体の動かし方をゲーム形式で展開していく。
普段は、子どもや保護者たちが自由に集い、にぎやかなしばふハウスだが、この時間にやってきたのは小学2年生の子どもが1人。新型コロナの感染防止の観点から、訪れる利用者は減っている一方、相談は増えているという。
「多くの内容は『子どもたちの生活リズムの乱れ』についての悩み」と三尾さん。多くの相談を受けオンライン会議システムを利用し配信を始めたが、今後も情勢を見ながら配信を続けていく予定だ。
子どもたちの学習の遅れをカバーする取り組みも各地で行われている。
県内を中心に50教室以上を展開する学研グループの進学塾サイン・ワン(さいたま市見沼区)は、塾生3千人を対象に「双方向オンライン授業」を行う。元々、社内でオンラインによる社員研修などが行われていたため、政府から緊急事態宣言が出された直後からオンライン授業へと切り替えることができた。
授業では、生徒と講師間でリアルタイムに発問・応答が可能。講師たちは、子どもたちの反応を確認しながら授業を進めている。
学研スタディエ首都圏教育本部運営統括部の佐久間貴充さんは「外出自粛などで不安が募る中、生徒たちには目標を見失わず、勉強に励んでほしい」とエールを送る。
開智未来中学・高校(加須市麦倉)とクラーク記念国際高校さいたまキャンパス(さいたま市大宮区)では、通常授業と同様の学習習慣をオンライン授業で確保している。
開智未来中学・高校では、生徒のストレスとその対応方法や家庭での安心できる環境づくりなどを記した休校中のガイドラインも作成。今後は休校措置解除後の不安を解消すべく、学校再開へ向けたガイドラインを示していくという。「この期間中に生徒たちにはやり抜く力と自制心を養ってもらいたい」と加藤友信校長。29日には小学生や中学生の受験生向けにライブ配信で、オンライン学校説明会を開催する予定だ。
クラーク記念国際高校さいたまキャンパスでは、この期間を通じて、オンラインを活用した今後の学校運営の可能性を見出しつつある。
22日に実施された1年生の生物の授業では、担当教師が自作のパワーポイント資料を画面上で生徒と共有し、自身は実物の顕微鏡を用いて授業を配信。動画の視聴者の中には、在宅勤務する教師がおり、チャット機能で担当教師の生徒対応のフォローに当たる。今窪一太キャンパス長は、「こういった状況がきっかけで始めたオンライン授業だが、進めていく上で今後の使い道の可能性を感じる機会にもなっている」と話す。
休校を解除した後も、悪天候で生徒が登校できない際の授業や、保護者会などで補助的にオンラインの活用を検討していくという。