埼玉新聞

 

<新型コロナ>涙…救世主・老舗お米屋さん、無料で料理配送 大打撃の飲食店と家庭つなぐ「一生忘れない」

  • 無料デリバリー代行「スーダーイーツ」を始めた須田商店の須田悦正さん

  • 飲食店から料理を受け取る「スーダーイーツ」の配達員(提供写真)

 お店から料理を受け取って注文したお宅へ配送-。今、注目されている新しい宅配システムを期間限定のボランティアで始めたお米屋さんがある。「須田さんのスーダーイーツ」。テークアウトはできてもデリバリーは難しい。そんな飲食店の救世主となっている。

 「UberEats(ウーバーイーツ)」ならぬ「SUderEats(スーダーイーツ)」を始めたのは上尾市南にある老舗の米店「須田商店」の専務須田悦正さん(48)。創業108年の同店の4代目だ。

 新型コロナウィルス感染拡大の影響で飲食店の打撃が大きい。一方、自粛で外出、外食ができずにいる家庭内にもストレスがある。この両者をつなぐのが須田さんが始めた「無料デリバリー代行」。範囲は上尾、桶川、伊奈の3市町。

 同店自体もコロナの影響を受けて配達が少なくなり、時間の余裕ができたことから、「今までお世話になってきた人たちの危機。こんな時だからできることを」と3月末に従業員と共に話し合った。UberEatsからヒントを得たこの企画を出した時は「最初はギャグだったんですよ。上尾はまだUberがないので」と笑う。

 配達担当の4人の従業員のうち1人を毎日専属にし、配達の注文があったら、飲食店に行く。料理を受け取って支払いを済ませ、お客の元へ。代金をもらい領収書を渡すワンストップ制で、配達代も手数料も受け取らない完全なボランティア。「うちの経営理念は自利利他。今はお金なんてもらえない」ときっぱり。

 試行錯誤で始めた無料デリバリー代行。最初はネット主体だったが、お年寄りに周知できないことから、1日200~300枚のポスティングを行うことにした。「経費はかけられないし、宣伝のためにやってると思われたくない」とできる範囲にとどまる。

 それでもリピーターが出てきた。あるお店の常連客は「行きたいけど行けないので」とメッセージカードを須田さんに託した。また和食店の女将さんからは「ありがとう」と涙を浮かべて感謝された。「あの顔は一生忘れられない。この1軒のためだけでもやってよかったと思う」

 須田さんのスーダーイーツは、須田商店のホームページ内に「コロナに負けない!応援特設ページ」(http://suda-shop.com/)を開設している。電話での問い合わせは(電話048・775・5210)へ。

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