埼玉新聞

 

注文殺到!ひっきりなし出前も 創業57年の人気店“中華一番”越谷を代表する町中華に 支える夫婦のすごさ

  • 「父ちゃん母ちゃんまた来るよってお客さんに言われることが一番の励み」と話す亀井実さん(右)と節子さん=14日午後、越谷市東越谷

    「父ちゃん母ちゃんまた来るよってお客さんに言われることが一番の励み」と話す亀井実さん(右)と節子さん=14日午後、越谷市東越谷

  • 「父ちゃん母ちゃんまた来るよってお客さんに言われることが一番の励み」と話す亀井実さん(右)と節子さん=14日午後、越谷市東越谷

 今年創業57年目を迎えた越谷市東越谷の中華料理店「中華一番」。店主の亀井実さん(92)は90歳を超えた今もなお厨房(ちゅうぼう)に立ち、中華鍋を振る。接客を担当する妻の節子さん(86)と二人三脚で半世紀以上、店を守り続けてきた。2人は「お客さんが喜んで食べてくれる限り店を続けたい」と“生涯現役”宣言。そして「若いもんには負けないよ。負けるもんか」と元気いっぱいだ。

■独学で修行

 越谷市内で豆腐店の次男として生まれた実さん。中華の道を志したのは、節子さんの実家が東京都江戸川区で中華店を営んでいたことから。結婚して独学で修業し、35歳の時に自宅1階で開業した。

 店の程近くに越谷市役所や越谷警察署、越谷市立病院があり、開業当時はひっきりなしに出前の注文が殺到。味の評判も広がり、越谷を代表する「町中華」になった。

 現在一番の人気メニューはラーメンと玉子チャーハンセット(税込み650円)。ミニサイズでなく、ともに1人前のボリュームで「男の人にはおなかいっぱい食べてほしいでしょ」と節子さん。ここ数年間、値上げも一切していない。

■特製ドリンク

 2人の起床は午前7時ごろ。お茶を飲む間もなく、早速動き出す。実さんは厨房でスープの仕込みに取りかかり、煮干しや鶏がらなど10種類以上をずんどうで煮込む。その後はバイクに乗って越谷市場へ食材の買い出し。店に戻ってからは野菜炒めやギョーザの下準備をする。節子さんはその間に店内外の清掃。2人が落ち着いて朝食を取れるのは午前10時過ぎになる。

 ここで決まって飲むのが、牛乳とバナナをミキサーで混ぜた特製ドリンク。「何十年と欠かしたことないよ。健康の秘訣(ひけつ)だろなあ」と実さん。一日の元気の源となっている。

 店の営業は午前11時からスープがなくなる午後4時過ぎまで。2人は調理に接客にと、ほぼ立ちっ放し。午後6時半に和食中心の夕食を食べ、午後8時半には布団に入る。

■家族の気遣い

 子どもは娘2人、孫が5人、ひ孫3人。市内に住む娘がたびたび店に顔を出してくれる。「毎回『体の調子はどう』って顔を見に来るから『大丈夫だよ。おまえたちには何も迷惑かけないよ』って話すと、娘もニコっと笑って安心して帰るんだよ。気持ちがうれしいよね」と節子さん。家族の絆が仕事の活力になっている。

 2人とも「病院にいつ行ったか覚えてない」と言うほど健康そのもの。ほぼ自分の歯で食事もできる。実さんは「コロッケや刺し身など、食いたいものをおいしく食べる。我慢と無理はしない。だけど腹八分目は守らなきゃ駄目」と自己管理も怠らない。

 東京浅草のダンスホールで出会い、今年で結婚生活65年目。店が定休日の日曜日は2人で電車に乗って浅草散策に行く。何歳になっても仲の良さは変わらない。そんな2人の共通の趣味が温泉地巡り。コロナ禍で数年間なかなか実現できなかったが、2人で温泉に行くことが今、一番の夢だ。「温泉に行ってゆっくり寝て。それが楽しみなんだよなあ」と実さん。「来てくれるお客さんのためにもっと頑張って、いつか温泉に行きたいね」と節子さん。夫婦2人、力を合わせてのれんをまだまだ守り続ける。
 

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