医療的ケア児の支援拡充も…さいたま市、公立保育所59施設を再編へ 5園は閉園、21園は7年かけ民間へ移管
埼玉県さいたま市は、「公立保育所のあり方に関する基本方針」を策定し、19日付でホームページ(HP)に公表した。公立保育所59施設を再編して保育機能を強化し、医療的ケア児など多様化する保育ニーズへの対応や、地域の子育て支援、民間保育所の支援を強化する。
基本方針によると、再編はこれまでの計画通り、2028年度に開始する。地域の保育の中心的な役割を担う基幹型公立園を全10区に設置。21園を3園ずつ、7年かけて民間移管を行う。23園は一般型公立園として継続。5園は老朽化により、26年度末までに閉園の方向性が示された。市は本年度中に、公立保育所の機能向上に関する庁内会議を立ち上げ、具体的な事業の検討を始めるとしている。
市内の保育需要は当面の間、増加を続け、ピークとなる30年度は約3万8800人と推計。ピークアウト後は緩やかに減少し、15年後の45年度までに、約2千人の減少を見込んでいる。公立保育所59園のうち約7割が築年数40年以上を経過して老朽化し、更新の時期を順次迎えるという。
一方で、市内の保育や子育て支援のニーズは多様化しており、医療的ケア児や障害のある子どもらの受け入れ確保、支援の充実が求められている。地域の中心となる基幹型公立園には園長経験者らを配置し、子育て支援や民間保育施設の支援ばかりでなく、人材育成なども担うとしている。
市は6月に素案を策定し、パブリックコメントを実施。有識者から「前提条件として、保育士の給料や労働条件の改善など、保育士の働きやすさも見直していくべきだ」、保護者から「民営化しても公立らしい保育や雰囲気を継続できる事業者に担ってほしい」などの意見が寄せられた。
市保育課の担当者は「保育士確保や待遇改善について、継続的に支援していく。公立の行ってきた保育を民間に引き継ぎながら、不安を与えないように再編を進めていきたい」と話した。
公立保育所の再編後の一覧は次の通り。
【西区】基幹=指扇▽一般=植水、馬宮▽民間=三橋西
【北区】基幹=大砂土▽一般=奈良、泰平▽民間=日進、東大成、宮原、日進西
【大宮区】基幹=大宮▽一般=桜木、三橋▽民間=寿能、天沼、上小、大成
【見沼区】基幹=大和田▽一般=七里、片柳、春野▽民間=東大宮、七里東
【中央区】基幹=上落合▽一般=大戸、八王子▽民間=下落合、鈴谷
【桜区】基幹=田島▽一般=大久保、上大久保▽老朽=西堀、白鍬
【浦和区】基幹=岸町▽一般=本太、常盤、大東▽民間=領家、針ケ谷、駒場、浦和中央、常盤北、東仲町
【南区】基幹=武蔵浦和▽一般=南浦和、曲本、大谷口▽民間=白幡▽老朽=文蔵、大谷場、辻
【緑区】基幹=尾間木▽一般=原山、三室
【岩槻区】基幹=西町▽一般=岩槻本町、諏訪▽民間=美幸
(基幹=基幹型公立園、一般=一般型公立園、民間=民間移管等園、老朽=老朽化に伴い26年度末に閉園の方向性としている園)
■基幹型保育園で相談対応も
人工呼吸器の使用やたん吸引など恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠な「医療的ケア児」の保育ニーズが、特に高まっている。2021年9月には、医療的ケア児支援法が施行された。さいたま市は20年度から、認可保育所での医療的ケア児の受け入れを支援。23年4月現在、5区7施設で計18人が在園しており、今後も拡充を図る。
市は独自事業として、11月ごろ、医療的ケア児保育支援センターを中央区に開設する。未就学の医療的ケア児と家族が気軽に集い、交流を図る場の提供、育児不安への相談、一時預かりを実施。人材育成や医療的ケア提供保育施設の支援も行う。事業者を公募して、選定を進めている。
公立保育所の再編は、多様化する保育ニーズに的確に対応することが目的という。再編により10区に1カ所ずつ設置される基幹型保育園は機能の一つとして、医療的ケア児の相談対応や支援センターにつなぐ役割を想定している。