埼玉新聞

 

<高校野球>悔しい…甲子園中止で浦学、共栄監督ら球児思いやる 代替大会に尽力も 大学野球したい生徒増

  • 甲子園中止「落胆する顔つらい」

 第102回全国高校野球選手権大会の中止が20日、決まった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今春の選抜大会に続いて球児たちの夢舞台が失われた。県内の指導者たちは「やりきれない思い」「切り替えには時間がかかる」と過酷な現実を受け止めた。

 春日部共栄の本多利治監督は準優勝した第75回大会(1993年)を含め、夏の甲子園に5度出場。「開催しても宿泊、交通、応援、たくさんの人に迷惑が掛かる。早々と高体連が全国大会の中止を決め、野球だけやってくれとは言えない」と主催者の判断を尊重した上で、「夏に向けて最善を尽くしたが、子どもたちに会って落胆している顔を見るのがつらい」と生徒の胸中を思いやる。

 浦和学院の森士監督は春夏合わせて21大会、チームを甲子園に導いてきた。「危惧していたことが現実となった。目標を閉ざされた生徒のことを思うと、次のステージを見据えてサポートしていかなければ」と率直な思いを語り、「皆さんの理解と協力が不可欠だが、埼玉のチャンピオンを決める大会が実現できるように、手を挙げてでも尽力したい」と代替開催の実現を願った。

 母校を率いる上尾の高野和樹監督は、自身も高校2年時に控え捕手としてメンバー入りし、甲子園の土を踏んだ。「楽しく、苦しく、高校野球の全てが詰まった期間を奪われてしまった。可能性を信じ、存在理由を懸けた、それぞれのドラマがあったはず。後ろ向きな考えや投げやりな考えにはなってほしくない」と力を込める。

 昨秋の関東大会8強で今春の選抜大会出場候補に挙がった西武台は、この夏に懸ける思いも例年以上のものがあった。河野創太監督は「甲子園と口に出してきた3年生の熱量を考えると、今の段階ではどんな声を掛けていいのか分からない。代替開催が決まるまでは期待を持たせることもできない」と失意の念を隠さなかった。

 昨夏の埼玉大会で4強入りした大宮東の河西竜太監督は同校で90年に甲子園出場を果たした自身の経験と重ね合わせ、「心が震えるくらい悔しい」と言葉を絞り出す。生徒たちへ「この経験も、努力も、生徒たちの人生に生かされると思うし、生かすべき。そう伝えたい」と熱い思いを口にした。

 昨秋の県大会で33年ぶり4強進出を果たした川口市立の鈴木久幹監督は「野球ができない環境が続き、大学へ行って野球をやりたいという生徒が増えている」と進路選択にも影響を及ぼしている現状を踏まえ、「この状況では命が大事なので仕方ない」と残念さをにじませた。

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