バイクの18歳死亡…対向車にはねられる、鹿とぶつかり転倒した直後 悲劇繰り返したくない高校生ら呼びかけ「ハイビームを」 動物衝突し通報しないと「当て逃げ」か…死骸でさらなる事故に
秋の全国交通安全運動期間(21~30日)に合わせ、皆野町下田野の秩父やまなみ街道(国道140号皆野寄居有料道路)料金所付近で、県立皆野高校の生徒たちが手作りのお守り計200個を配布し、ドライバーに交通ルールの順守と動物の飛び出し注意を呼びかけた。秩父地域では鹿などの野生動物と衝突する交通事故が年間60件以上発生。今年6月には皆野町の国道140号で、バイクの男性=当時(18)=が鹿とぶつかって転倒、対向車にはねられて死亡した。秩父署は通報の徹底や夜間時のハイビーム活用などをドライバーに訴え、交通事故防止を図っている。
秩父署と小鹿野署によると、昨年の対動物による交通事故件数は、秩父署管内(吉田地域を除く秩父市、横瀬、皆野、長瀞町)が計48件、小鹿野署管内(秩父市吉田地域と小鹿野町)が計16件。年間の発生件数はここ数年で大きな変動はなく、毎年、夜間の山間地で鹿が絡んだ事故が多発している。
県道路公社によると、皆野高生らがキャンペーンを行った、皆野寄居バイパス―皆野秩父バイパス(計14・8キロ)間の動物死骸処理件数はここ5年間で計18件。衝突後、そのまま走り去るドライバーもいて、道路パトロールの際に死骸を発見するケースも多い。今年6~7月、皆野秩父バイパス間で鹿の飛び出し事故が立て続けに3件発生したことから、「鹿飛び出し注意」の立て看板2基を秩父小柱インターチェンジ(IC)付近に新たに設置した。
皆野町の30代男性は5年前に車で町内の県道を走行中、飛び出してきた鹿と正面衝突した。車はフロントやサイドミラーが大破し、修理代が約50万円かかった。「道路に散らばった車の部品などは片付けたが、対処法が分からず、警察などには通報しなかった」と男性は打ち明ける。
秩父署の山戸正則交通課長によると、動物は「物」扱いになるため、野生動物と衝突した場合は、道路交通法で交通事故(物損事故)に該当する。物にぶつかり、そのまま逃走してしまうと事故不申告(当て逃げ)に問われる可能性がある。
今年1~8月末の同署管内の対動物による交通事故件数は計30件(前年同期1件増)。鹿は群れで動く特性があり、立て続けに事故が発生するケースが多い。山戸交通課長は「次の事故を誘発させないためにも、通報を徹底してほしい」と強調。動物との衝突を防ぐため、山道ではスピードを落として夜間はハイビームを有効活用し、もし衝突してしまった際は動物には近づかずに道路上の危険防止の措置を取り、警察官に事故の状況を報告するよう呼びかけている。