<新型コロナ>イオンなどで給食用タマネギを販売 さいたま市、生産農家を支援 市職員も食べて応援
新型コロナウイルスの感染拡大防止で小中学校の臨時休校が続いている中、給食用の新タマネギを生産している農家が苦しんでいる。さいたま市は地元の生産農家を支援しようと、大型スーパーに協力を求めたり、市職員への販売を決めた。生産農家は「廃棄しないで済み、ありがたい」としながら、「経営的に厳しい。一日も早く収束してほしい」と話している。
緑区高畑の農業若谷茂夫さん(69)は代々続く農家で、小松菜や新タマネギ、伝統野菜のクワイなどを生産している。2002年に農業生産法人を設立し、社員7人、パート職員40人を雇用。小松菜などは市場にも出しているが、新タマネギの多くは市内の小中学校の給食用で、約100校にそれぞれ納入している。3月2日からの休校で、給食がなくなり、「給与など固定費を払わないといけいない。経営者として苦労している」と話す。
地産地消と地域貢献のため、約5年前から給食用に生産を始めた。新タマネギの畑は約1万平方メートル。例年9月に種をまき、11月に植え付ける。子どもたちにできるだけ新鮮なものを食べてもらおうと、早生(わせ)、中生(なかて)、晩手(おくて)と品種を変え、翌年の5~7月に収穫して各学校に配送する。収穫量は計約60トンに上り、「これからも掘り上がってくる」という。
若谷さんが市に苦境を訴え、農業政策課がイオンリテールと協議。若谷さんの畑にイオンの担当者が訪れ、販売が決まった。今月19日にはイオン北浦和店やイオンモール与野店など県内8店舗で、約4トンが納入された。食べて応援しようと、市役所などでも職員向けに、若谷さんの新タマネギ9~10トンを販売する。
若谷さんは地元の小学校で食育授業をしたり、中学生の職場体験も受け入れている。「農業は自然との闘いだが、一番大切な食べ物を生産している。生命維持産業と、子どもたちには常に伝えている。『おいしいよ』という言葉を励みに頑張っている」
緊急事態宣言が解除されて、学校が再開されても先は見通せない。若谷さんは「給食が始まるかどうか。分散登校で半分ずつになるかもしれない。一日も早く解除してほしいが、感染がぶり返しても困るし、複雑な心境。早くワクチンができて、とにかく一日も早く収束してほしい」と話した。