埼玉新聞

 

東京五輪開幕までのチャレンジ、完走へラストスパート コロナで嫌がらせも…毎日誰かがバトンつなぐ

  • 公園利用者に配慮し、のぼりや看板なども出さずに行うチャレンジ2020=11日午前、さいたま市南区

 東京五輪の開幕までの間、毎日誰かがフルマラソンを走り続ける企画「チャレンジ2020」が、ラストスパートを迎えている。五輪開幕は1年延期となったが、当初の予定通りゴールを今年7月13日に設定。舞台となるさいたま市南区の別所沼公園では、大記録へ向けたランナーたちの熱い思いが一つになっている。

■2015年スタート

 壮大な挑戦は15年1月に始まった。企画者はNPO法人HERITAGE(ヘリテージ)代表で、立教大学時代に箱根駅伝へ4年連続出場した楠田昭徳さん(77)。09年にはフルマラソン連続52日間のギネス記録(当時)も達成した。

 東京五輪の開催決定をきっかけに、初めは1人で走る覚悟だった。次第に賛同者が集まり、市民ランナーや学生などが参加。ネットで参加者を募り、不在の日はボランティアランナーが協力する。単独走とリレー形式で、これまで9千人近くがバトンをつないできた。

 6年目の今も記録は継続中。毎朝9時にスタートし、同公園の周回コース(923メートル)を約46周(42・195キロメートル)走る。大雪でも台風の日でも無事に完走し、記録中断の危機は一度もなかったという。

■コロナで暗雲

 ゴールへ向け順調かと思われたが、思わぬの逆風もあった。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言に伴い、公園の利用が自粛。大型連休(GW)は逆に公園へ大勢が集まり、一部の利用者から嫌がらせのようなことも受けた。

 記録継続のため参加者に対して、バトンを使わない、走る時にマスク着用、集団で走らないなどのルールを設定。のぼりや看板も畳んだ。完走は続いているが、「まさか世の中がこんな状態になるとは思わなかった」と楠田さんは嘆く。

■走ることが人生

 楠田さんはかつて事業に失敗し、多額の借金を背負ったこともある。その際に信頼していた知人からも裏切られた。

 絶望の底から救ったのは昔から大好きだったマラソン。60歳を過ぎて再び本格的に始め、多くの仲間と出会った。

 そんな仲間と一緒に歩んできた挑戦も、いよいよ残り50日(5月24日現在)。ゴールテープがはっきりと見えてきた。達成すればギネス世界記録にも認定される見込みで、カウントダウンとなる7月からは特別企画も計画する。

 さらに楠田さんは記録達成後の、次の新たな挑戦も既に考えている。詳細は7月13日のゴール達成後に発表予定で、「夢のある挑戦にしたい」と楠田さん。「挑戦開始から今まで2千日近く、主役は参加してくれた多くのランナーたち。皆さんには本当に感謝。できればコロナが収束し、無事に7月のゴールを迎えたい」。有終の美へ、今日も思いをつなぐ。

ツイート シェア シェア