埼玉新聞

 

<川口いじめ>プロレスラー・木村花さん死去の背景…被害者の母に相談の声「死ねば考えてくれる?」

  • 記者会見する森田志歩さん(左)と元生徒=26日、川口市

 女子プロレスラー木村花さん(22)が亡くなった背景には、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷があったとされる。川口市の中学校在学中にネットで匿名の書き込みをされ、裁判で発信者を特定した男子元生徒(17)は「誰か分からない人からネットで中傷されるのは、すごく怖い」と同情を寄せる。いじめ被害者の母親で、4月に発足した教育問題の市民団体「プロテクト・チルドレン」代表の森田志歩さん(川口市)にはネットいじめに遭っている県内外の子どもや保護者から相談電話が寄せられている。

■死ねば同情される

 「今、ネットで中傷されているのに誰も助けてくれない。死ねばたくさんの人たちがいろいろ言ってくれて、みんなが考えてくれるのだろうか」(小学高学年の女児)。「見た人は、みんな書き込みが本当だと信じてしまう」(女子高校生)。森田さんに電話してくる子どもたちはネットで中傷されるつらさを訴える。

 相談は小学生から高校生まで、東北や関西地方の子もいる。女子中学生は「大人たちが何も考えずにネットで中傷するから子どもたちも悪いことだと思わない」と指摘した。

 ある保護者は「死んだ人のことが報道され、世間の人たちが一斉に声を上げると、死んだ方がいいと思ってしまう。みんなが自分のことを思ってくれるから」と話したが、同様の意見が多いことを森田さんは心配する。

■その時だけ問題視

 男子元生徒は「匿名でばれないと思って書いてるかもしれないけど、調べれば分かることだし、書いてる内容によっては人の心が壊れるくらい傷付けます」と話す。

 元生徒に寄り添い、裁判を一緒に闘ってきた森田さんは「ネット上の非道な暴力という問題は何年も前から問題視されている。子どもたちも含め何人もの人が自死した。そのたびに厳罰化を求める声があるけれど、常にその時だけ」と嘆く。

 ネットによる見えない相手からの攻撃は時や場所を選ばず続けられ、被害者はどこにいても攻撃される、というネットの特性を説明した森田さんは「ただただ精神的に追い込まれ逃げ場もない。大人たちがこのようなことを平然とすることは許されない。一人の人の命が亡くなってから声を上げても遅い」と訴えた。

■自ら発信者を特定

 元生徒は2015年の入学以来、部活動内でいじめに遭い、2年生だった16年秋から不登校になり、3年生の春から登校を再開していた。その矢先にネット上で実名が明かされたり、中傷が始まり、元生徒は「外に出るのが怖い」と言い、再び不登校になった。

 元生徒は18年1月に掲示板サイトの運営会社に発信元のIPアドレス開示を要請。その後、通信3社に情報開示を求めて提訴し、東京地裁は「プライバシー侵害があった」と3社に開示を命じる判決を言い渡した。発信元の3人は生徒だけでなく保護者も投稿していたことが分かり、3人の謝罪につながった。

 プロテクト・チルドレンについての問い合わせは、森田さん(電話080・4182・0919)へ。

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