埼玉新聞

 

立腹…「気が利かねえな」と言われた職員、男性を蹴る 臓器破裂し死亡 電池交換を何度も断った末に 介護施設で悲劇、法廷で「言葉には言葉で返すのが筋」 執行猶予を求めた弁護士、語った暴行までの背景

  • 事件があった特別養護老人ホーム「吾野園」=9日午後1時28分ごろ、飯能市南川

    事件があった特別養護老人ホーム「吾野園」=5月9日午後1時28分ごろ、飯能市南川

  • 事件があった特別養護老人ホーム「吾野園」=9日午後1時28分ごろ、飯能市南川

 今年5月、飯能市南川の特別養護老人ホーム「吾野園」で入所する男性=当時(90)=の背中を蹴って死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた、元同園職員の無職男(48)=秩父市野坂町2丁目=の論告求刑公判が4日、さいたま地裁(金子大作裁判長)で開かれた。検察側は懲役5年を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求めて結審した。判決は10日。

 論告で検察側は、老人ホームは介護が必要な人が安心して余生を過ごす施設と指摘し「入所者を守るべき立場の男が、暴力で命を奪った結果は重大」と説明。男は介護作業中に男性から補聴器の電池交換を何度か要求され、その都度、断ったことで男性から「気が利かねえな」と言われたことに腹を立てて蹴ったが、「言葉には言葉で返すのが筋。暴行を正当化できる理由にはならない」と述べた。

 弁護側は実母の介護に加えて、1人で10人以上の見回りをするなど複数のことに同時に対応しなければいけなかった点を強調。精神的、肉体的にストレスがかかった状態で「いつもなら抑えられる感情が抑えられなくなり、衝動的に犯行に及んでしまった」などとし寛大な処分を求めた。

 起訴状などによると、男は5月9日、入所していた男性が着座する車椅子の背もたれを右足で1回蹴る暴行を加えて脾(ひ)破裂の傷害を負わせ、同日、狭山市内の病院で腹腔(ふくくう)内出血により、死亡させたとされる。飯能署が暴行容疑で逮捕し、さいたま地検が傷害致死罪で起訴していた。
 

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