埼玉新聞

 

スタッフら感動…現金10万円「子どものために使って」 見知らぬ男性、さいたまのこども食堂に寄付

  • 見知らぬ男性から現金10万円の寄付を受けた「東岩槻こども食堂」の後藤成美代表(右)らスタッフ=4日午後、さいたま市岩槻区東岩槻2丁目

 「子どもの支援のために使ってください」。見知らぬ男性が今月4日、さいたま市岩槻区東岩槻の「東岩槻こども食堂」を訪れて、現金10万円入りの封筒を手渡した。代表の後藤成美さん(61)とボランティアの女性スタッフらは「感動しました。せっかく頂いたものを生かすため、有効に使いたい」と話している。

 同食堂は2016年8月から毎月第1、第3木曜日に開店。ボランティアスタッフらが約50人分の食事を作り提供を続けてきた。ところが、新型コロナウイルスの影響で、今年3月からは運営できない状態に。5月25日、首都圏の緊急事態宣言が解除されたため、6月第1木曜日の4日夕方に会議を開き、今後の運営方針を話し合っていたところ、男性が訪れたという。

 男性は勤務帰りで、食堂の開催日を知っている様子だった。政府による特別定額給付金の10万円を受け取る予定と説明し、「子どもの支援のために」と封筒を手渡した。後藤さんは10万円の一部と思い、「ありがたく頂きます」と言って中身を見て驚いた。寄付を受けたときに名前や住所を記入してもらうノートを示したものの、男性は「加藤」と名乗るだけで立ち去った。コメや野菜、現金の寄付もあるが、10万円は最高額だという。

 後藤さんらは、子どもたちの孤食や困っている人に食を提供できないかと考え、子ども食堂を始めた。子ども同士やお年寄り、3世代家族も食事に訪れる。食事をすることだけが目的ではない。ゆっくりと会話をして、友人をつくり、顔の見える関係ができた。地道な活動が地元に住む男性に伝わったのだろうか。

 会議では9月までのメニューを決めた。今月18日に再開する予定で、メニューは、ちらしずし、唐揚げ、フライドポテト。新型コロナウイルスの対策で、持ち帰ることができるように作る。料金は大人300円、18歳までの子ども100円だが、寄付を受けて無料にすることも検討している。後藤さんは「受け取ったばかりで、まだ何に使うかは決めていないが、こうやって使いましたと(男性に)知らせたい」と話していた。

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