禁止されない場所存在しない…埼玉の「県虐待禁止条例」一部改正案が委員会可決 継続審議の動議発動も否決
埼玉県議会最大会派の自民党県議団(田村琢実団長)が開会中の9月定例会に提案した県虐待禁止条例の一部改正案を巡り、6日の福祉保健委員会で議案に対する説明や質疑が行われ、自民、公明の賛成多数で原案通り可決した。13日の本会議でも可決される見通し。
改正案では、小学3年生以下の児童の養護者は住居などに児童を残して外出することを禁じ、4~6年生については努力義務とする。罰則規定は設けない。虐待を受けた児童を発見した場合、速やかに通告・通報すること、各自治体が待機児童解消、児童放置の防止に資する施策を講じるものとしている。
提案者を代表し、委員の小久保憲一県議(自民)は各委員から質問されたさまざまなケースに、「前提として、放置が禁止されない場所は存在しない。児童の生命・身体などに危険がないこと、すぐに児童の元へ駆け付けることができること、この二つが確保されない限り、放置に該当すると考えている」と答弁した。
辻浩司県議(民主フォーラム)は「子どもだけで外遊びをすることは、ごく自然な光景で誰しもした経験。むしろ大人が関与しない領域で遊ぶことは育ちによい。放置の概念を様態のみに着目して解釈することに無理がある」と述べ、小川寿士県議(同)がパブリックコメントの募集や参考人招致などを含めての継続審議とする動議を発動したものの、否決された。
1~3年生についても努力義務とする修正案を提出した八子朋弘県議(県民)は「住みやすい社会をつくっていくバランスに欠けてしまう」と危惧。城下師子県議(共産)も「子育て家庭を精神的に追い詰める。近隣への疑心暗鬼を広げ、虐待を助長しかねない」と指摘したが、修正案は反対多数で否決された。
報道陣の取材に応じた田村団長は、罰則規定を今後検討するかについて、「あまりにも子どもの放置事例が出てくれば再考する必要がある。まず(放置は虐待という)認識を広めることに重きを置いている。(3年生以下の線引きは)学童保育の現状を含め、広域行政のバックアップを想定して決定している」と考えを示した。
改正案が可決されれば、2024年4月1日から施行される。執行する立場となる県の金子直史福祉部長は「理念は確かにいい。不安になられている方もいると思うので、懸念している。制定された暁には、よく内容を精査して適切に執行していく」と話した。