言葉足らずで不安与えた…埼玉の「虐待禁止条例」改正案、自民県議団が撤回 再度の議案提出は「ゼロベース」
埼玉県議会最大会派の自民党県議団(田村琢実団長)は10日、子どもだけでの登下校などを放置による虐待と定める、県虐待禁止条例の一部改正案を取り下げると発表した。会見した田村団長は「私の言葉足らずにより、県民・国民の皆さまに不安を与えてしまった。安全配慮義務の説明が不足し、こういうケースは虐待に当たると、〇×で回答してしまった私の責任」と陳謝した。
提出した改正案の内容について田村団長は「瑕疵(かし)はなかったと感じているが、説明が不十分であり、不十分さが広く伝わったことで、心配や不安が広がったと猛省している。今回は追記で放置について記載をさせていただいた。条例全体の構成を説明し切れず、改正部分のみが表に突っ走ってしまったと感じている」とした。
2018年に施行された県虐待禁止条例は、18歳未満の児童および65歳以上の高齢者、障害者の養護者に、虐待の禁止と安全確保への配慮などを義務付けている。改正案では、小学3年生以下の養護者は住居などに児童を残して外出することなどを禁じ、4~6年生は努力義務とした。罰則規定は設けず、虐待を受けた児童を発見した場合、速やかに通告・通報すること、各自治体が待機児童解消や児童放置を防止する施策を講じるものとしていた。開会中の9月定例会に提出され、6日の福祉保健医療委員会では自民、公明の賛成多数で原案通り可決し、13日の本会議で採決する予定だった。
福祉保健医療委員会では委員を務める他会派の県議から、さまざまなケースに対して放置に当たるかどうか質疑が行われたものの、提案者代表の小久保憲一県議は「前提として放置が禁止されない場所は存在しない。児童の生命・身体などに危険がないこと、すぐに児童の元へ駆け付けることができること、この二つが確保されない限り、放置に該当すると考えている」との答弁に終始していた。
田村団長は会見で、安全配慮義務について「各ご家庭、子どもの発育状況によって違うものになる。留守番の約束事が家庭内で確認されている場合など、ご心配いただいているほとんどのオペレーションが虐待には当たらないと考えている」とし、再度の議案提出については「ゼロベースで、全く考えていない」と否定した。
今後は13日の本会議で提案者が議長に撤回を請求し、採決される見通し。
■県議会本会議や委員会質疑で放置に当たると想定された行為の例
・近所に回覧板を届ける際など短時間でも子どもに留守番をさせる
・子どもだけで登下校させる
・子どもだけで公園で遊ばせる
・高校生のきょうだいに子どもを預けて出かける
・子どもだけを家に残しごみ捨てに行く
・子どもにお使いを頼む
・スーパーの駐車場で車内に子どもを残す
※「子ども」は小学3年生以下、4~6年生は努力義務